紙面から(パラリンピック)

自信の泳力、躍動エース 競泳・木村選手

競泳男子50メートル自由形で銀メダルを獲得し笑顔の木村敬一選手=12日、リオデジャネイロで(共同)

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 パラリンピック関係者のほとんどがメダル候補に挙げたエースが、幸先の良いスタートを切った。競泳男子50メートル自由形(視覚障害S11)で銀メダルを獲得した全盲の木村敬一選手(26)=滋賀県栗東市出身、東京ガス。三度目のパラリンピックでさらなるメダル追加の期待が高まる。

 スタートの飛び込みで失敗し、深く潜りすぎた。浮かんだ際、右のコースロープにぶつかる。「これは大変だ」。持ち前のがむしゃらなパワーと、誰よりも練習してきたという自信をもって突き進み、自己ベストを更新してゴールした。

 初出場の北京大会の時は高校生だった。前回ロンドン大会は100メートル平泳ぎで銀メダル、同バタフライで銅メダル。周囲の期待が高まる中、「記録自体が上がっていて会社環境も恵まれている。(メダルを)十分狙える位置にいる」と自信をのぞかせていた。

 先天的な疾患で一歳の時に全盲に。幼少期、姉やその友人と遊んでいるうち、「何か違う」とうすうす感じたのを覚えている。活発でぶつかったり転んだりで生傷が絶えなかった。「プールなら多少は安全だろう」と母の正美さんに勧められ、特別支援学校の小学四年時に水泳と出合う。

 滋賀県彦根市にある県立盲学校は通学に時間がかかることに加え、「多くの人と触れ合ってほしい」という父稔さんの意向もあって、木村選手は中学に入学するときに一人、上京。筑波大付属盲学校に進み、水泳部に所属した。水泳の基礎はできていたことから「何か一つ自信を持って続けているものがあるのは、ちょっとした優越感だった」と振り返る。

 中学二年の時、二〇〇四年のアテネ・パラリンピックがあった。「出てみたい」。おぼろげな思いは高校の時には「いける」と確信に変わった。

 木村選手は100メートル自由形など五種目で出場を予定し、「どれかで取れれば」と語った最初のレースでメダルを獲得した。続く100メートル平泳ぎの予選は全体の二位で通過した。決勝では初の「金」を狙う。

 (荘加卓嗣)

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