紙面から(パラリンピック)

50歳吉田敗退、視線は未来へ 卓球

男子シングルス1次リーグドイツ選手と対戦する吉田信一=田中久雄撮影

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 卓球男子シングルス(車いす3)で初出場の吉田信一(50)=情報通信研究機構=が1次リーグで敗退した。高校生の時のバイク事故で車いす生活になり、50歳で立った世界の大舞台。そんな自らの道のりを「遠回りの例」と評する“やんちゃな中年”の挑戦は次のステージへと移る。

 ゲームセットの瞬間、大きく頬を膨らませ、息を吐き、自問自答した。「悔しい。もっと何かできたのでは」。8日の1次リーグ初戦で中国選手に0−3で敗れ、9日の第2戦に予選通過の望みをつないでドイツ選手と戦った。

 健常者の卓球と、車いす卓球の大きな違いは、ラリーのテンポの速さ。車いす利用者の瞬時の移動範囲は限られる。「左右に大きく振ると、こちらも振られるから」と高速で正面に打ち返し合う戦術を取る。

 9日の試合相手は得意とする欧州の選手。「自分から(集中力を)切らすことが多い」ためだ。しかし、2ゲームを先取され、3ゲーム目は持ち前の粘り強さで相手を揺さぶって奪ったが、力尽きた。

 卓球に出合ってから、競技を最優先にした人生を送ってきた。故郷・福島を離れ、結婚生活と競技の両立に悩んだ時は競技を選んだ。競技資金を友人に借りたこともある。「いろんなものを犠牲にしてきたかもしれない」と振り返る。

 その末に出場した今回のパラリンピック。「良い経験をさせてもらったし、これからの選手にも目指してもらいたい」と話す。残念な結果だったが「課題も見つかり、やらなくてはいけないことがいっぱいあることも分かった」。リオ大会後に待ち受けるであろう次の試合を見据えた。

 (荘加卓嗣)

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