紙面から(パラリンピック)

支えられ全力ペダル ペア再結成の自転車女子・鹿沼選手

自転車女子タンデム1000メートルタイムトライアルで5位となった鹿沼由理恵選手(左)とパイロットの田中まい選手=9日、リオデジャネイロで(田中久雄撮影)

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 自転車の女子タンデム1000メートルタイムトライアル(視覚障害)で、鹿沼由理恵選手(35)=東京都町田市、楽天ソシオビジネス=が五位に入った。本命種目を前に、ハンドル操作を担い、共にこぐパイロットとして支えるガールズケイリンの田中まい選手(26)=千葉市、日本競輪選手会千葉支部=とともに幸先よいスタートを切った。

 タイムは1分11秒075。鹿沼選手は「練習では10秒台を出していたが、次につながるタイム」と手応えを感じた様子。田中選手は「コースの内側を攻めた」と汗をぬぐい、「大勢の観客の前で、楽しみながらやりたい」と前を向いた。

 かつてクロスカントリースキーで二〇一〇年のバンクーバー冬季大会に出場した鹿沼選手は、一一年十二月、練習中に転倒して左肩を強打。思うようにストックが使えなくなり悩んでいた。そんな時、海外の選手から自転車への転向を勧められ、決意する。

 視覚障害者の鹿沼選手が自転車に乗るにはパイロットが必要。競技関係者が候補を探し、日本競輪学校(静岡県伊豆市)の学生だった田中選手の存在を知る。同校まで訪ね、熱意を伝えると、父も競輪選手だった田中選手は承諾した。「自転車に乗りたいという強い思いに打たれて」

 一四年はペアとして本格的に活動したが、鹿沼選手は別の選手と乗っていた自転車で転倒。再び鎖骨を折る大けがを負い、約一カ月自転車に乗れない期間が続いた。田中選手も本業に専念し、ペアは事実上解消した状態になった。

 しかしリオ出場が射程に入った昨年九月、本番を見据えた鹿沼選手は「やはり乗りやすく(力いっぱいペダルを)踏んでいけるのは彼女だけ」と再び打診。「ずっと気になっていた」と田中選手も応じ、一年を経て再結成となった。

 今大会、鹿沼選手は日の丸を背負う責任を感じ「私でいいのか」と自分を追い詰めている。田中選手は「人の夢に巻き込まれちゃった」と苦笑しながら「一緒に大きな舞台の夢を見させてもらっている。代え難く、素晴らしい経験」。

 二人はこのほか、メダルを狙う3000メートルパシュートやロードタイムトライアルなど三種目に出場を予定。共に見る夢の実現に向けて、二人は息を合わせ、全力でペダルをこぐ。

 (荘加卓嗣)

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