紙面から(パラリンピック)

49歳選手導く「目」に 滋賀の女子大生ランナー

伴走者として近藤選手を支える日野さん(右)。リオデジャネイロでの宿舎も同部屋という=滋賀県草津市の立命館大びわこ・くさつキャンパスで

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 リオデジャネイロ・パラリンピックの視覚障害者女子マラソンに、立命館大三年の日野未奈子さん(20)=滋賀県草津市=が伴走者として参加する。ランナーの「目」となり経験が求められる大役だが、自分の母親と同世代の近藤寛子選手(49)=同県栗東市=とは息もぴったり。「満足のいく結果を出せるよう、全力でサポートする」と夢舞台を前に意気込む。

 「リオを目指してみないか?」。昨年八月、所属する立命館大陸上部のコーチから電話があった。リオ出場を目標に掲げる近藤選手が、同性の伴走者を探しているという。「自分を変えるきっかけになるかも」。二つ返事で引き受けた。

 日野さんは中学、高校時代に、駅伝や中距離種目で全国大会に出場。希望を持って大学に進学したが、膝を痛めタイムは伸び悩んだ。転機は、障害者にスポーツを教える指導員資格を取得した一年生の冬。研修中、弾ける笑顔でスポーツに親しむ障害者を見て「走ることがただただ好きで始めた陸上に、もう一度前向きに取り組もう」と気持ちを新たにした。そんな姿がコーチの目に留まった。

 初めて伴走を務めた今年二月の別府大分毎日マラソンの視覚障害者部門で近藤選手が3時間18分5秒で二位となり、リオへの切符をつかんだ。日野さんはレース前半を担当。「みなちゃん、ありがとう。競技場で待ってて」。引き継ぎの際、同選手が力強く放ったねぎらいに、達成感と同時に、共にリオに行くことを確信したという。

 本番を前にした二人での練習は週二回程度。「十メートル先で折り返します。ナイスペース」。日野さんは盛んに声を掛けながら、一日約二十五キロを共に走り込む。前向きな言葉を掛け、精神面を支えるのも伴走者の大きな役目。最近は、表情や息遣いで近藤選手の体調も分かるようになった。

 近藤選手は「本当に良いパートナー。リオでは入賞を目指したい」と感謝を口にし、健闘を誓う。一方、「走ることは生きがい」と語る同選手を間近で見てきた日野さん自身も、「何事にも前向きになれるようになった」。自らの競技記録も、この一年で伸びた。

 開会式の九月八日(日本時間)は二十一回目の誕生日と重なり、「一生忘れられない日になると思う」と日野さん。二人三脚の集大成となる十八日のレースを、心待ちにしている。 

(鈴木啓紀)

 <視覚障害者マラソン> 障害の重さによって(1)伴走者が必須(2)伴走者と走るか単独で走るかを選択可能(3)単独で走る−の3クラスに分かれる。女子はリオ大会で新たに正式種目となった。近藤選手は(2)のクラス。ランナーと伴走者は通称「きづな」と呼ばれる長さ1メートルのロープを結んで輪にするなどして、手を取り合い走る。

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