紙面から

トトロの国へ、大会キャラもバトン マスコット考案の日系3世

「ビニシウス」(右)と「トム」を手に日本アニメの魅力を語るルシアナ・エグチさん=サンパウロで(中野祐紀撮影)

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 二十一日(日本時間二十二日)に閉幕したリオデジャネイロ五輪で、大会の顔として盛り上がりに大きく貢献したのがマスコットの「ビニシウス」だ。デザインしたのは日本のアニメとゲームにほれ込んでデザイナーになったというサンパウロ在住の日系ブラジル人三世ルシアナ・エグチさん(40)。閉会式の五輪旗を引き継ぐセレモニーに日本が誇る「スーパーマリオ」や「キャプテン翼」が登場し、「あこがれの日本のキャラクターへ最高のバトンタッチができた」と喜んだ。

 ボサノバの名曲「イパネマの娘」の作詞者の名が付いた「ビニシウス」は、いくつかの動物を混ぜたような愛らしいキャラクター。世界中の大陸からやってきた移民が入り交じって暮らすブラジルの「ミックス文化」を表現したくて、いくつもの動物を混ぜたデザインにこだわった。

 ピンと立った耳はネコ、丸まった長いしっぽはサル。しなやかな手足はジャガー。「バネがありそうでしょう。超人的な動きを見せてくれるアスリートたちに敬意を表してそうしました」。同時に手掛けたパラリンピックのマスコット「トム」は、豊かに葉が茂る植物に似せた。大地にしっかり根を張る木々の強さが、さまざまな困難を克服して輝くパラリンピアンのイメージにぴったりだと考えたという。

 キャラクターデザインを志したきっかけは、学生時代に見た日本のアニメ。「何といっても『となりのトトロ』がすてき。もふもふのおなかが最高にかわいいですよね」。スタジオジブリの宮崎駿監督が生んだ名キャラクターの魅力を語りだすと止まらない。

 第二次世界大戦前に青森県から渡った農業移民を祖父母に持つエグチさんは、難関のサンパウロ大建築学科卒。トトロみたいなアニメを作りたくて全く違う業界に飛び込み、一年間カナダに留学して学んだ。

 日本の土はまだ踏んだことがない。「今回の閉会式で、日本がキャラクターを大切にしてくれる国だとあらためて分かった。東京五輪には、ぜひビニシウスを連れて行きたいわ」。四年後、どんなキャラクターたちが五輪を盛り上げてくれるのか、今から楽しみで仕方がない。

 (中野祐紀)

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