紙面から

大技に代表落選者への思い 新体操・杉本選手

新体操団体決勝 リボンを演技する杉本選手=21日、リオデジャネイロで(今泉慶太撮影)

写真

 「目にはリボンは四本しか見えないかも。でも、九人分の思いを束ねて投げるんです」

 リオデジャネイロ五輪の新体操日本代表「フェアリージャパン」の主将杉本早裕吏選手(20)=名古屋市出身、みなみ新体操クラブ=は、仲間に向かって一度に四本のリボンを投げるラストの大技「四本投げ」を語るとき、大きな瞳をうるませる。

 五輪開幕の一カ月前、代表候補として一年の大半の寝食を共にしてきた九人から、五輪メンバー五人に絞られた。漏れた四人には、同郷で同じクラブ育ち、高校の後輩でもある竹中七海選手(17)=名古屋経済大市邨高校三年=もいた。

 猛練習を課してきた山崎浩子監督(56)は「競技に徹し、落選者のことはドライに忘れなさい」と繰り返し念を押したが、杉本選手にはできない。高校で同級だった体操女子の寺本明日香選手(20)=愛知県小牧市出身=は言う。「すぐ人の気持ちを考えちゃう早裕吏にそんなの無理無理。そういう子だから優しくふんわり、仲間の取りやすいリボンを投げられるんだと思う」

 今年一月に成人式を迎え、自身に残された時間についてよく口にするようになった。「私の競技人生を一日に例えると、二十歳はもう、夜八時くらい」。しなやかに踊り続ける妖精の体は少しずつ、でも確実に衰えている。

 決勝の舞台。万感込めて投じたリボンの軌跡はやや乱れた。とっておきの大技が決まらず結果は八位。「たくさんの人が応援してくれたおかげで入賞することができた。後悔はないです」

 (中野祐紀)

※ご利用のブラウザのバージョンが古い場合、ページ等が正常に表示されない場合がございます。