紙面から

千両役者・ネイマール 「人生で一番幸せ」

ブラジル−ドイツ 前半26分、FKで先制ゴールを決めるブラジルのネイマール=共同

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 やはり役者が違った。1−1で延長戦に入っても得点は動かず、PK戦に突入。ドイツのキッカーが失敗し、王手をかけたブラジルの5人目はネイマール。ゆっくりした助走からGKの逆を突き、ゴール右に決めると、聖地・マラカナンは6万3000人の足踏みと地鳴りのような大歓声に包まれた。

 自身2度目の五輪で金メダルをつかんだネイマールは、王者を意味する「カピオン」コールを浴び、感極まり号泣した。「人生で一番幸せ。神様、家族、チームに感謝したい。結果を出せと批判を受けたけど、自分はサッカーでしか答えを出せない」

 ブラジルはボールを奪うだけで歓声が沸き起こる雰囲気の中、主導権を握った。迫力あるドイツの攻撃をいなしながら、鋭い速攻を何度も仕掛ける。前半26分。ネイマールが自ら得た約28メートルの直接FKをゴール左上に決め、先制点を奪った。後半14分に一瞬の隙を突かれて同点とされたが、足をつりながらも前線で敵を追い回し続けたネイマールの奮闘もあり、流れを完全に渡さなかった。

 ブラジルにとって、この一戦の持つ意味は大きい。2014年。自国開催のワールドカップ(W杯)準決勝で、ドイツに1−7の歴史的大敗。ブラジル代表のエース、ネイマールは南米選手権を辞退してまで、オーバーエージ(OA)枠での五輪代表にこだわり、母国の屈辱を晴らした。

 「自分の夢と故郷の夢がかなった。いまは満たされている。自分自身を誇りに思う」。王国に初の金メダルをもたらした24歳のスター選手は、表彰式で金メダルに2度キスをして感慨に浸った。

 (森合正範)

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