紙面から

「接触」一時は失格の判定 上訴が奏功し銅確定

 荒井広宙選手に十九日、日本陸連の職員が興奮した様子で報告した。「荒井、銅メダルが決まったぞ」。うれしい知らせが届いたのは、沿道で陸上女子20キロ競歩の日本選手を応援していた時。自身のゴールから三時間半が過ぎていた。

 問題は残り800メートル付近で起きた。カナダのダンフィー選手に追い抜かれ四番手に落ちていた荒井選手がスパートをかけ、再び前に出る。その際、荒井選手の右腕とダンフィー選手の左腕が接触し、ダンフィー選手がよろめいた。荒井選手は三位、ダンフィー選手は四位でゴールした。直後、カナダチームは「妨害行為」として、レースの審判長に抗議した。

 レース後、荒井選手によると、「ダンフィー選手から『ソーリー』と謝られた」という。「僕は悪いと思っていないし、故意でもない。相手も怒っていない。カナダチームの上の判断だと思う」と話した。

 日本陸連によると、抗議自体は「やり得」の側面があり、さほど珍しくないという。が、ゴールから約一時間後、審判長が下した判断は「荒井選手失格、ダンフィー選手三位」。カナダ側の抗議が認められた。

 日本陸連はすぐに国際陸上競技連盟(IAAF)の評議会に上訴。日本から取り寄せた映像と「接触した数秒後にもダンフィー選手はよろけている。接触との因果関係はない」との文書を提出した。

 評議会のメンバー五人による多数決で、日本の主張は認められ、荒井選手の三位が確定した。日本陸上チームの麻場一徳監督は「あれで駄目なら陸上競技が成り立たないと思っていた」と語気を強めた。

 (森合正範)

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