紙面から

荒井、失格のち堂々「銅」

男子50キロ競歩 カナダのダンフィー(右)と競り合う荒井広宙=隈崎稔樹撮影

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 日本競歩界に初のメダルをもたらしたのは五輪初出場、28歳の荒井だった。50キロ。3時間40分の長丁場。終盤でも体力が衰えず、競り勝つ強さを見せつけた。「ようやく競歩の先輩たちの頑張りを形にすることができた。陸上でメダルを取るのは難しい。すごくうれしい」

 1年前より、成長した姿を見せた。残り1キロ。3番手の荒井は後方から歩み寄ってくるカナダ選手に並ばれた。「まずいな」。昨年の世界選手権(北京)で4位だったことが頭をよぎる。先輩の谷井に並ばれ、競り負けた。メダルか、入賞かの大きな分かれ目だ。

 一度はカナダ選手に逆転を許した。もう昨年のような悔しい思いをしたくない。「仕掛けずに終わるのは嫌だ。力を出し切ろう」。残り800メートル。スパートで前に出た。この時のために練習を積んできた。「最後に体が動けた」。両手を広げて笑顔でゴールした。カナダ選手との接触があったとして一度は失格とされたが、日本陸連の抗議により判定が再度覆り、メダルが確定。二転三転する中、競歩界にとっての快挙を達成した。

 身長180センチ、体重62キロ。長い手足を生かし、大きなストライドで歩いていく。股関節が柔らかく、膝がしっかり伸びるフォームは11年間、一度も失格がない。この日は25キロ付近で1枚目の警告を受けた。しかし、「しっかりかかとから接地していこう」とその場で修正。それも荒井の強みだ。以降はスムーズに進んでいった。

 駆け引きがある競歩は経験がものをいう。東京五輪でもまだ32歳。「しっかり練習をして、今回以上のメダルを取りたい」。日本競歩界に輝かしい足跡を残し、4年後はさらなる高みを目指す。 (森合正範)

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