紙面から

8人、強く高く シンクロ・日本チーム「銅」

 演技順は最終8番目。チームFR。この時点で3位のウクライナがターゲットだ。井村雅代監督の最後の言葉に、8人の気持ちは固まった。

 「9度目の五輪で最も中身の濃い、ハードな練習をさせてきた。今からたった一回。できないはずがない。やり残しがあるような演技だけはするな。この一回に懸けて、泳いでこい」

 勢いよく飛び込み、最初のリフト。後ろ宙返りからひねって高さをアピールした。日本の神話をテーマにしながら、サンバの笛の音も織り込む軽快なプログラムが観客を引き込む。海外勢に劣る手足の長さも、「丈夫で長持ち」と逆転の発想で長所に変えた。疲労もピークに達する終盤、20秒を超える脚技をこれでもかと繰り出し、スタンドから歓声と拍手を引き出した。

 「たくさん練習してきた。最後の一回に自分の力を出し切れた」。主将の乾が得た充実感は、他のメンバーも同じ。プールから上がり、緊張の面持ちで得点を待つ。95・4333点で銅メダル。デュエット、チームのダブル表彰台は実に3大会、12年ぶり。強豪復活という使命を果たした、選手たちの涙は止まらない。そんな8人を、井村監督は抱き締めて迎えた。

 「想像以上にしんどい道のりだった」と乾は振り返る。ロンドン五輪でメダルなしに終わり、どん底まで落ちたシンクロ日本。失われた時間を取り戻すため、2014年から井村監督が復帰した。「あの子たちにメダルを取らせる」。決意を胸に代名詞の猛練習で鍛え上げ、選手たちも歯を食いしばってついてきた。

 そうやって積み重ねてきた日々があったから、最後の大勝負で存分に力を発揮することができた。「すべてがきょうにつながっていたと思うと、乗り越えてきて良かった」。表彰台に上った乾は、感無量の表情を浮かべた。復権を果たした選手たちをリオの青空が祝福した。 

 (高橋隆太郎)

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