紙面から

梨紗子、次は妹と頂点へ レスリング63キロ級金

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 四年後、私もあそこに立てるだろうか。リオデジャネイロ五輪の女子レスリング63キロ級で金メダルに輝いた川井梨紗子選手(21)の妹友香子さん(18)=至学館大一年=はスタンドでそう自らに問い掛けていた。表彰台の一番高いところで笑う姉が何だか、まぶしい。

 友香子さんも63キロ級の選手。川井選手は四年後の東京五輪に58キロ級で挑むと決めており、二人は「姉妹で金メダル」と夢を描く。

 子どものころ、活発な川井選手とは違い、内向的だった友香子さんはレスリングなんてやりたくなかったという。元レスリング選手で、地元のクラブで指導していた母初江さん(46)にかまってほしくて、姉も入っていたそのクラブの門をたたいた。

 姉妹そろって負けず嫌い。顔を合わせるとけんかばかりしていたが、選手としてはずっとその背を追ってきた。川井選手が進んだ愛知の強豪、至学館高校、至学館大というコースを友香子さんもたどった。同じ時期に高校に通ったことはないが、寮はいっしょ。石川県津幡町の実家を離れての心細い暮らしは、姉妹の間の垣根も消していった。いつからか友香子さんは姉のすべてを応援できるようになったという。

 川井選手が昨年、世界選手権に出場したときのことだ。メダルをとればリオ行きが確実になる大一番。いつになく緊張していた川井選手は一通のメールに救われる。友香子さんからの長文のメッセージはこう締めくくられていた。「どんな結果になっても、友香子にとって梨紗子はずっと憧れの存在だから」。よっしゃと腹をくくって銀メダル。川井選手は「良い妹です。今でも思い出すと泣けてくる」と振り返る。

 友香子さんはここ四カ月、実戦から遠ざかっている。四月に左肩を痛め、六月に手術した。出場権を得ていた八月の世界ジュニア選手権も辞退した。

 リオのマットで躍動する姉は目の前なのにまだ随分と遠い。でも「絶対に追いついてみせる」。うれし涙で真っ赤な瞳に力がこもった。 (兼村優希)

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