紙面から

「私たちは窮地に強い」 タカマツ、大逆転の頂点

女子ダブルスで優勝し喜ぶ高橋(右)、松友組=佐藤哲紀撮影

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 日本バドミントン史上初の瞬間が、ついに訪れた。女子ダブルス決勝、最終第3ゲーム。マッチポイントを握った高橋のスマッシュに、相手の返球がネットにかかる。コートに崩れ落ち、手で顔を覆う高橋。松友は満面の笑みでしゃがみ込んだ。ベンチにいた朴柱奉(パク・ジュボン)監督と中島慶コーチが駆け寄り、日本に初の金メダルをもたらした2人を強く抱きかかえた。

 第3ゲーム、終盤の連続失点で16−19。敗色濃厚の場面で、2人の動きが鋭さを増した。松友がラリーから思い切って前に飛び出したり、相手の読みを外したコースに落としたりと、真骨頂のプレーで19−19。さらに高橋が2連続で得意の強打を決め、大逆転劇が完結した。

 窮地に追い込まれ、「こういう時は自分たちの方が強いと思っていた」と高橋。闘志に着火。「前日にレスリングで(伊調ら3選手が)逆転勝ち。ここからでも逆転はあり得るな、と切り替えた」。一方、松友は追い詰められた状況を楽しんでいたといい、「相手を『おっ?』と思わせるプレーをしようと思った」。宮城・聖ウルスラ学院英智高でペアを結成して、もうすぐ10年。タイプの違いが長続きのこつという2人が、土壇場でそれぞれの持ち味を発揮した。

 「世界一だと思っている」と誇るコンビネーションを武器に、2014年に初めて世界ランキング1位になった。ただ、それが重圧になり、昨年は世界選手権で早々に敗退するなど精彩を欠いた。「勝たないと、うまくやらないと、となって、力を出せずに後悔することが何度もあった」と松友。互いの思いを伝え合い、「自分たちが楽しいと思えるバドミントンをしたい」という原点に立ち返った。

 一度は4位に落ちた世界ランキングを、再び1位に戻して臨んだリオ五輪。海外勢の気迫を前にしても、自然体を貫いた。「自分たちのプレーが出せたことがうれしい」と口をそろえた2人。その結果が金メダルという形に結び付いた。

 (井上仁)

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