紙面から

てんぐから仲間思いに 卓球・吉村選手、大学団体戦で成長

卓球男子団体で2位となり銀メダルを手に笑顔の(左から)水谷、丹羽、吉村の各選手=17日、隈崎稔樹撮影

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 リオデジャネイロ五輪で快進撃を見せ、決勝では王者中国に果敢に挑んだ卓球男子団体の一員、吉村真晴(まはる)選手(23)=名古屋ダイハツ=は、自他共に認める「お調子者」。強心臓と多彩な技が魅力だが、てんぐになって挫折しかけた過去もある。克服できたのは四年間を過ごした愛知工業大(愛知県豊田市)で団体戦の喜びを知ったからだった。

 茨城県出身でフィリピン人の母を持つ。母の母国のタガログ語で「愛する」という意味の「マハル」と名付けられた少年は、卓球の神に愛されたかのように頭角を現した。高校三年時の全日本選手権では、五連覇中だった水谷隼選手(27)を破って優勝した。

 「あの時は、本当にばかなてんぐだった」。周囲のアドバイスを聞かなくなり、相手に徹底的に研究されて成績が下降した。二〇一三年度の全日本では八強にすら入れず、家族に「選手をやめたい」と漏らした。

 復活のきっかけは、愛工大のチームメートと団体で参加する全日本大学対抗選手権だった。一三年、一五年に日本一に輝くと、仲間から口々に「おまえがおったから勝てた」と声をかけられたという。「自分のプライド以外の物を背負ううれしさに目が覚めた。仲間のためにと考えれば、自然と謙虚でいられる」

 水谷選手へのライバル心はひとまず封印して、団体メンバーとして臨んだ初の五輪でつかんだ銀メダル。「本当にずっしり重たい。最高です」。男子団体初のメダル獲得に貢献した充実感に浸った。

 (中野祐紀)

◆所属先の社員ら銀メダルに拍手 名古屋の本社で観戦

 「よくやった」。卓球男子団体で銀メダルを得た吉村真晴選手が所属する名古屋ダイハツ(名古屋市中区)本社ショールームでは十八日午前から社員ら五十人が決勝戦をテレビ観戦した。惜しくも王者中国に屈したが、その奮闘ぶりに惜しみない拍手が送られた。

 吉村選手が登場すると歓声がいっそう大きくなった。点を取るたびにバルーンスティックを打ち鳴らしたり、日の丸を振ったりして大応援。「ヨシムラ」コールを繰り返した。第四試合、吉村選手のシングルスで敗北が決まった瞬間は「あー」とため息。それでも、すぐに拍手が響き、最後は全員で「銀メダル、バンザイ」と声を張り上げた。

 愛工大卓球部の同級生で今春入社の酒井真菜さん(22)は「プレッシャーからか、動きが硬かった。夢は途中だと思うので東京五輪で金メダルを」とエール。松山日出春常務(58)は「中国相手にすばらしい戦いだった。『感動をありがとう』と伝えたい」とねぎらった。

 大学時代の吉村選手を知り、当時から支援する坪内孝暁社長は現地で応援した。

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