紙面から

親娘の夢三ツ星 家族、絶叫や歓喜

 夜の会場に君が代が三度響き渡った。日本の金メダルラッシュとなった十七日のレスリング女子。スタンドでは、選手たちの家族らが泣き笑いで偉業をたたえた。

伊調馨選手の表彰式を見つめる姉千春さん(左)と父春行さん=17日、磯部旭弘撮影

写真

 三選手の決勝はどれも逆転劇。「行けー」「そこだー」。手に汗握る展開に、応援席からは絶え間なく声が上がった。

 初めは静かに見守っていた登坂絵莉選手の父修さん(52)は、リードされたまま終盤に入るとマットを指さし「攻めろー」と絶叫。この日の朝、母安津子さん(52)の携帯電話に娘から「今日は負ける気がしない。最高の一日を自分の力で勝ち取ってくるから」とメッセージが届いた。「金メダルを取ってくれる」と信じていた二人。「夢がかなって良かったね」とマットで日の丸を掲げる娘を真っ赤な目で見つめた。

登坂絵莉選手の試合を見守る父修さん(左)と、母安津子さん=兼村優希撮影

写真

 伊調馨選手が四連覇を決めると、姉千春さん(34)は「もしかしたら負けるかもと頭をよぎったが、金を取ってくれると信じていた」と胸をなで下ろした。家族を探し、スタンドのすぐ下まで来た伊調選手と真っ先に握手。「頑張ったね、お疲れさま」と声をかけると、それまで表情を崩さなかった妹が千春さんの手を額に当てて泣いた。

 土性沙羅選手は吉田沙保里選手の父で故人の栄勝さんに幼いころから仕込まれたタックルで栄冠をつかんだ。「先生(栄勝さん)のおかげ。本当にありがとうございます」。試合が終わると父の則之さん(48)はそう言って、天に向かって一礼。吉田選手の母や兄と抱き合い、男泣きした。

 (植木創太、磯部旭弘、兼村優希)

土性沙羅選手の優勝を喜ぶ父則之さん(右)、母祐子さん=植木創太撮影

写真

※ご利用のブラウザのバージョンが古い場合、ページ等が正常に表示されない場合がございます。