紙面から

猛練習耐えて開花 乾・三井組「銅」

シンクロ・デュエット・フリールーティン決勝 井村監督(中)に銅メダルを掛け笑顔を見せる乾(左)、三井両選手=16日、リオデジャネイロで(今泉慶太撮影)

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 世界の舞台で、日本の女性アスリートたちが躍動した。リオデジャネイロ五輪は第十二日の十六日、シンクロナイズドスイミングのデュエット決勝で、主将を務める乾友紀子選手(25)=滋賀県近江八幡市出身=のペアが、二大会ぶりの表彰台で喜びの涙を流した。卓球女子団体では、十五歳の伊藤美誠(みま)選手=静岡県磐田市出身=がシングルス、ダブルスで二勝を挙げ、銅メダル獲得に貢献。バドミントン女子シングルスは準々決勝で日本選手が激突した。

 シンクロナイズドスイミングのデュエットで三井梨紗子選手(22)と組み、二大会ぶりの銅メダルを獲得した乾友紀子選手。「先生が、もう一度五輪のメダルへと向かわせてくださった。本当に続けて良かった」と涙を浮かべ、井村雅代監督(66)と抱き合った。

 初めての五輪だったロンドン大会はデュエット、チームともメダルを逃し、低迷する日本を印象づけてしまう。世界となかなか勝負にならない状況に、乾選手は「目標を見失いそうになっていた」と振り返る。

 二年後、五輪のメダル奪還という明確な目標を掲げ、十年ぶりに井村監督が指導陣に復帰する。シンクロ日本の立て直しは、主将の乾選手を中心に進んでいく。

 辛口の井村監督が「乾が八人いれば」と認める実力は、国内では群を抜く。その分、要求も高くなる。昨年五月のジャパンオープン。乾選手はただ一人、三日間で合計十度演技するという過酷な日程に挑み、練習プールで涙を流した。

 「あんたが出るって言ったんでしょ」。井村監督は容赦なくしかり飛ばした。「日本の女王としての役目がある。前を走ることが大事。簡単な道を選ぶのではなく」という思いを込めて。

 今年の同じ大会で、乾選手は三日間で九度の演技を平気な顔でこなした。井村監督のもと一日十時間を超える練習を重ね「逃げ出したくなる時もある」が、そのたびに「五輪でメダルを取る」という目標を確認してきた。心技体で強さを増した乾選手に「続けていて良かったでしょ」と名伯楽は目を細めた。

 八月十六日は井村監督の六十六歳の誕生日。表彰式を終えた乾選手は、恩師の首にメダルをかけた。五輪の日程が明らかになった日から、三井選手と「最高のプレゼントはメダル」と決めていた。「絶対に先生と勝負の舞台に立ちたかった。それがかない、運命みたいなものも感じる」

 (高橋隆太郎)

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