紙面から

三者三様生まれた信頼 卓球女子団体銅

 うれしくて涙が止まらない。福原愛が両手で顔を覆う。石川佳純がその肩に手を置く。最年少の伊藤美誠も加わり、小さな輪になって抱き合った。卓球女子団体で銅メダルを獲得した「卓球三姉妹」。世代も性格も三者三様ながら、互いを信頼し、たどり着いた勝利だった。

 主将の福原はチーム最年長の二十七歳。初めて出場した五輪は二〇〇四年のアテネ大会。四度の出場を重ねて、卓球を続ける意味を考えてきた。

 幼いころからメディアを通じて全国に名を知られ、いつも「福原愛」ではなく「卓球の愛ちゃん」と呼ばれた。「どうして私だけと、自分を受け入れられなかった」。葛藤もあったが、少しずつ自分の立場、役割を理解していった。「メダルを取ることで次世代の選手の具体的な目標になるし、子どもたちがスポーツを始めるきっかけになる。私たちが頑張ることで良いことがたくさんある。すごく幸せな職業だなと思う」

 ロンドンの時に最年少だった石川は二十三歳。押しも押されもせぬエースに成長した。福原が気遣いでチームをまとめれば、石川が自らに課すのは結果。「勝ってチームに貢献することが仕事。できることは全てやらないといけないという責任感は、強くある」。四年前は福原と、今年四月に現役引退した平野早矢香さん(31)の“姉”二人が引き受けてくれた重圧や責任感を、一身に担った。団体準決勝で敗れた直後、涙をにじませる仲間に「切り替えよう」「挑戦者の気持ちで臨もう」と戦う姿勢を示し続けた。

 十五歳の伊藤は、まだ小学生だったロンドン五輪をテレビで観戦した。「団体戦は迫力があり、感動した。次は私が感動を与えられるようになりたい」と五輪への思いを募らせた。しっかり者で、物おじしない。「自分から卓球を取ったら何も残らない」という“末っ子”が、時に“姉”二人を刺激した。

 練習や普段の生活で常に一緒というわけではない。カラオケで選ぶ曲もかみ合わない。それでも、勝って喜びを分かち合いたいという思いは一つだった。

 「三人で勝ち取ったメダル」。試合後、みんなが声をそろえた。みんなで泣き、最後はみんなで笑って五輪を終えた。

 (井上仁)

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