紙面から

劇勝、水谷が一矢 卓球男子団体、王者の壁険しく

日本−中国 第2試合でプレーする水谷=隈崎稔樹撮影

写真

 雄たけびとともに水谷が両膝を地に着き、崩れ落ちた。団体決勝の第2試合、最終第5ゲーム。11−10でサーブを放ち、相手のリターンが大きく台を越えた。「五輪の決勝という舞台で中国選手を破れたことは、メダル以上に価値があるかもしれない」。今大会おなじみの光景となった、渾身(こんしん)のガッツポーズであふれる歓喜を表現した。

 五輪の団体決勝戦。日本にとって未知の領域で相手は王者中国。しかも第1試合を丹羽が落とし、対するは過去12戦全敗の許●。これ以上なく厳しい状況で、水谷は躍動した。第1ゲームは追いつかれた10−10から2連続得点。第2ゲームは中盤の5連続失点で一時逆転を許しながら、再び追い上げてものにした。

 台から下がることなく先に攻め、勢いにのまれた相手がたまらずミスをする。どちらが格上か分からなくなるような光景だった。続く2ゲームを落とし、最後も7−10と追い込まれたが、調子の良さに自信があった。「いつも僕が逆転負けするパターン。ただ、いつもと違うのは僕が最後まで諦めなかったこと」。5連続得点で劇的な勝利をもぎ取った。

 今大会は個人戦で男子卓球初の銅メダルを獲得し、団体戦でも自身は負けなし。準決勝では元世界ランキング1位のドイツのボルを相手にせず、決勝でも自分の役割を果たした。「今日は中国に勝つ自信があったので、負けて悔しい」とチームが敗れて笑顔は控えめだったが、新境地を見せて自身3度目の五輪を締めくくった。

 (井上仁)

 【注】●は日へんに斤

※ご利用のブラウザのバージョンが古い場合、ページ等が正常に表示されない場合がございます。