紙面から

弱気を返上、執念 錦織、成長の証し

テニスの男子シングルスで銅メダルを獲得した錦織圭選手=14日、リオデジャネイロで(内山田正夫撮影)

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 喜びを味わうように、両腕をゆっくりと空に突き上げた。リオデジャネイロ五輪で十四日(日本時間十五日)、テニス男子シングルス三位決定戦を勝った錦織圭選手(26)は、三度目の五輪で届いたメダルに「すごく苦しい場面が何度かあったが、気力を振り絞って勝った。素直にうれしい」と達成感を込めた。

 「大きさ、大事さというのも頭に入っていた」という三位決定戦は、中盤までペースをつかんだ。第一セットを取った後、第二セットもリードしたが、世界ランク五位のナダル選手(スペイン)の攻勢を受ける。「メダルを意識して硬くなり、焦りが出た」。逆転でセットを失い、形勢は一気に危うくなる。

 八強で終わった二〇一二年のロンドン五輪で「(メダルを目前に)三位決定戦で負けたら、どんな気持ちになるのかな」と消極的な言葉を漏らしたこともある。しかし、この日は、四年前の弱気とは違う勝利への執念をみせた。「さすが大舞台。これを乗り越えれば、きっと自分の力になる」と集中して第三セットを取り、大物を倒した。

 「誇りと日本人として出る喜びのためだけに戦う」と今大会に臨み、試合を重ねるにつれて、自分の成長を感じていた。「メダルをきっかけに、もっと強くなれる」

 表彰式では、かけてもらった銅メダルを控えめに持ち上げた。感想を問われ、「重かった」と語り、言葉を継いだ。「四年後が楽しみという、今までにない感情が出てきた」。五輪のたびに進化を見せる日本のエース。東京へ。いっそうの高みへの挑戦が始まった。(北島忠輔)

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