紙面から

国背負う戦い、闘志最後まで 錦織、銅獲得

テニス男子シングルスで銅メダルを獲得、日の丸を手に晴れやかな表情の錦織圭=14日、リオデジャネイロで(佐藤哲紀撮影)

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 錦織圭(26)の放ったサーブが、ナダル(スペイン)の正面を突く。北京五輪の金メダリストはラケットに当てるのが精いっぱい。九十六年ぶりのメダル獲得を決めた錦織は、込み上げる思いをかみしめるように、ゆっくりと右手を突き上げた。

 国を代表して戦う選手に期待されるメダルの重みを強く意識している。大会前から「国を背負って戦う。気持ちの入り方が違う」と闘志を前面に出していた。

 テニスは一九八八年のソウル五輪で競技に復帰した。その翌年に生まれた錦織は五歳でテニスを始めてから「五輪で試合をしたい」と思い続けていた。

 初出場した北京五輪は初戦負け。世界ランク十七位で臨んだロンドン五輪はベスト8。「緊張して負けた北京の苦い思い出や、ロンドンで得た自信。五輪ならではの重みがある」

 五輪の成績は、通年で戦うツアーとは無関係。四大大会の締めくくりとなる全米オープンを直後に控え、過密な日程を避けて参加しない選手もいる。だが錦織は「モチベーションが違うところにあるから」と出場に迷いはなかった。

 決勝進出を懸けたマリー(英国)戦は、持ち前の粘りを発揮する前に圧倒された。金メダルという最大の目標は阻まれ、メダルを懸けた最後の戦いへ。

 三位決定戦では序盤から順調にポイントを重ねた。第二セットで「メダルを意識した」というその時、逆襲を受けた。「何回も気持ちが折れそうになった」が、声援を背に攻め続けた。

 三度目の五輪で手にした初めてのメダル。「最後まで日本のために頑張るというのは心地よいというか、楽しかった」。錦織が、万感の笑顔を見せた。

 (北島忠輔)

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