紙面から

太田選手、元選手の姉の夢を実現

声援を送る姉理穂さん=中野祐紀撮影

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 決勝のスタンドでは太田選手の姉理穂さん(24)が大きな声援を送っていた。

 太田選手の異名「NINJA WRESTLER(忍者レスラー)」と印刷されたTシャツを着込み「しのぶーっ、攻めろーっ」。敗れると「よくやったーっ」と目に涙をためながら、日の丸の小旗を振ってたたえた。

 理穂さんは幼いころ、レスリング経験のある父の指示で、弟の「練習台」になっていた。青森県五戸町の自宅玄関のちょっとしたスペースで弟のタックルを受け続ける日々。「どつかれるだけじゃつまらん」と思った小学三年の時、自身も競技をスタート。山口県の高校に「レスリング留学」するほどのめり込み、全国大会を制する実力者になった。五輪を夢見て自衛隊体育学校でも競技を続けたが、一昨年、けがを理由に引退した。

 泣きながら二人でご飯を食べた際、弟が言ってくれたという。「これまで一緒に世界を目指すライバルだったけど、ゆっくり休んで。夢は俺が絶対実現する」

 日本からの航空機のトラブルのため、理穂さんが会場入りしたのは決勝の試合開始のわずか一時間前。準決勝までの弟の雄姿は見られなかったが「いいんです。すごく格好よかったから」。最高の負け試合をしっかりと胸に刻んだ。

 (中野祐紀)

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