紙面から

五輪3度目、気高く咲いた 錦織、銅メダル

男子シングルスで銅メダルを獲得した錦織圭=佐藤哲紀撮影

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 相手の体正面へのサーブが決まり、2時間49分の熱戦に決着がついた。テニス男子シングルスの3位決定戦。日本人選手として96年ぶりのメダルとなる銅メダルを獲得した錦織は、湧き上がる歓喜をかみしめるように、両拳を握り、天を仰いだ。「苦しい場面もあったが最後までファイトして、日本のために頑張るというのは心地良いというか、楽しかった」。日の丸を肩にかけ、誇らしげにコートを踏みしめた。

 第1セットを難なくとり、第2セットも5−2で迎えた第8ゲーム。勝利が目前に迫ったところで、試合は急展開した。あと2ポイントで決着という30オールで、ダブルフォールトを犯した。「硬くなった。メダルを意識した」。ツアー上位常連の世界ランキング7位でも「さすが大舞台」という五輪のメダル。それも「96年ぶり」の重圧はすさまじかった。

 ここでの切り替えと集中力に、自らの成長を感じとった。「何度も落ちかけた場面はあったけど、いつも粘って勝ってるので、それをイメージした」。第4ゲームはストロークで粘ってミスを誘い、このセット先にブレーク。「あまり覚えていない」というほど自分のプレーに入り込んでいた。5−3で迎えた第9ゲーム、最後は2本続けてサーブで決め、「これを乗り越えれば自分の力になると感じた」とほっとした表情だった。

 日本テニス界は1920年アントワープ五輪で、男子シングルスと同ダブルスで銀メダルを獲得。それが日本の五輪初メダルだった。24年パリ五輪後に正式競技から外れ、88年ソウル五輪で復活。日本の男子シングルスは苦戦が続いたが、12年ロンドン五輪で錦織が88年ぶりの8強入り。そして4年後、ついに表彰台へ返り咲いた。

 五輪を自分を成長させる場と捉える錦織。3度目となったリオでも「絶対に何かしらつかんだ」と表情は明るい。そして4年後。「どうなっているか分からないけど、もっともっと強い気持ちで、強くなって臨みたい」と力強く語った。

 (井上仁)

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