紙面から

師弟共走ゴール 女子マラソン・田中選手

女子マラソン19位でレースを終え応援席に手を振る田中智美選手=14日、リオデジャネイロで(隈崎稔樹撮影)

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 十四日に行われた陸上女子マラソンで十九位だった田中智美選手(28)は「皆さんのおかげで元気に走り切れた」。所属する第一生命の山下佐知子監督(51)らに感謝した。

 初の大舞台にリラックスした表情で臨んだ田中選手。ペース変動の激しい先頭集団に14・7キロ付近で一度は追い付くなど意地を見せた。

 リオ五輪へ向け山下監督との二人三脚が始まったのは、一昨年の横浜国際女子マラソンの後からだった。翌年の世界選手権の選考レースで初優勝を飾ったが、積極性を疑問視され代表から落選した。山下監督は烈火のごとく憤った。「私以上に怒ってくれた」。師弟の絆はこれ以上なく強固になった。

 山下監督は「何かを変えるのは努力しかない」と激しい走り込みを課した。一緒に合宿中だった今年の元日。自身が不在だった山下監督の自宅に、田中選手から年賀状が届く。「人生かけて名古屋、走ってきます」。夫が撮影した決意文の画像が携帯電話に届き、監督の胸が震えた。面と向かっては言わない田中選手の決意表明だった。

 名古屋ウィメンズマラソンでは小原怜選手(天満屋)とのデッドヒートを1秒差で制して初の五輪行きを決めた。田中選手は山下監督を捜し、抱きついた。

 高校時代は無名、進学した大学の陸上部にも門前払いされそうになった田中選手が、ゆっくりと、確実に進んだ日々。バルセロナ五輪代表だった山下監督と、同じステージにたどり着いた。(高橋隆太郎)

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