紙面から

山部、逃げず銅 柔道女子78キロ超級

 切れ味鋭い技で一本を取る柔道を目指してきた。女子78キロ超級の3位決定戦。山部は開始直後の大外刈りで技ありを奪い、優勢勝ち。「メダルを持って帰りたいという思いだけで戦った」とほっとしたような表情を浮かべた。

 五輪と世界選手権で計3度優勝のオルティス(キューバ)との準決勝は、ほぼ互角の展開だった。しかし残り約40秒、前がかりになった瞬間に投げを食らい、有効を奪われた。勝機を逃し「前襟を(持って胸を)突いておけば良かったのに、投げようと奥襟を持ってしまった」と悔いた。

 気持ちの弱さを指摘され続けてきた。この日も試合後に「やめたいと思うことがたくさんあった」と打ち明けた。指導者に自分の才能を信じるように諭され、踏みとどまったが、「社会人でも柔道を続けるなら世界を目指さないといけない。でも、できるかなと」。自信のなさが殻を破りきれない要因だった。

 ラグビー日本代表のメンタルコーチの本を読むなど、前向きになれることは何でもやり、最後につかんだリオ行きの切符。「逃げずに良かった」としみじみと語る。

 最後は持ち味を発揮して銅メダルを手にしたが、薪谷翠コーチは精神面の成長を認めたものの「金メダルじゃない」とさらなる飛躍を促す。山部は「これ以上に苦しい4年間になると思う」と慎重に話しつつ、「やっぱり金メダルを取りたい気持ちはある」と意欲を見せた。

 (井上仁)

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