紙面から

原沢、逃げる王者つかめず 柔道男子100キロ超級

男子100キロ超級決勝フランスのテディ・リネール(右)に敗れ、しゃがみ込む原沢久喜=佐藤哲紀撮影

写真

 客席から罵声が飛び交う中、5分間はあっという間に過ぎた。男子100キロ超級の原沢は悪くても指導一つの差で後半勝負に持ち込む作戦だったが、まともに組み合うことができず、1分すぎまでに二つの指導を受けた。

 組み手で妥協しないリネールに徹底して逃げられ、「(リネールは)消極的な部分があったかなと思うが、それだけ勝ちに対する執着心もすごく感じた」と唇をかんだ。不利な組み手になるとすぐに切るリネールに、正面突破は難しい。組み際の技、帯を持っての大内刈りなど奇襲に活路を見いだしたが、井上康生監督は「それも出させてもらえないくらい封じられた」とうなった。

 リネールとは2014、15年の世界選手権で七戸龍(九州電力)が決勝で対戦。今回は世界ランキング2位の原沢が決勝で当たり、いずれも敗れた。日本勢は最重量級で2番手の地位を確保しているが、井上監督は「われわれが目指しているのは2番ではない」と王者打倒にこだわった。原沢は昨年の全日本選手権で初優勝して一気に伸びてきた選手だが、壁は厚かった。

 全日本柔道連盟の山下泰裕強化委員長は「リネールというものすごくでかい強豪を倒すのは、他の階級の金メダルとはひと味もふた味も違う」と話す。ロンドン五輪の金メダルなしから復活を期した日本男子の象徴が100キロ超級。絶対的な王者を倒せば最高の形で復活を宣言できたが、東京五輪に持ち越すこととなった。

 (井上仁)

※ご利用のブラウザのバージョンが古い場合、ページ等が正常に表示されない場合がございます。