紙面から

錦織、前日の死闘で疲れ粘れず マリーに完敗

男子シングルス準決勝 アンディ・マリーと対戦する錦織圭=内山田正夫撮影

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 リオの観客は優しい。体操など他競技の会場でも、思うに任せぬプレーをした選手には慰めを超えた激烈な声援や拍手が起こる。この日の第2セットから、センターコートに何度も響いたのは「ニシコリ」コール。96年ぶりのメダルに挑む錦織は、その温かみに結果で応えることができなかった。

 ロンドン五輪覇者のマリーには過去7戦で1勝の難敵。前日、モンフィスとの2時間53分の死闘を制した疲れを残す両脚は、相手の揺さぶりに翻弄(ほんろう)された。

 第1セット、1−2から初のブレークを許すと、次のサービスゲームも浮き球のチャンスボールをネットにたたきつけて相手のものに。そのままこのセットを失った。

 第2セットは接戦に持ち込んだ。3−5と追い込まれた第9ゲームでは得意の「エア・ケイ」を決めて観客を沸かせたが、粘りきれなかった。「ミスが多すぎた。彼(マリー)の安定したテニスに太刀打ちできなかった」とうつろな表情で振り返った。

 四大大会などのテニスの主要大会とはまるで異質な舞台。過去に出場した2度の五輪とも環境は違った。「失礼ながら、全体的なコンディションは挑戦者のレベル。シャワーも冷水で修業みたいになる」。それでも「まあ、楽しみながら」。国柄に合わせたおおらかさで過ごしてきた。

 3回戦が雨で順延となった10日には、ロッカーで他の競技に見入った。「金の重圧を背負った体操の内村(航平)君が一番感動した。ラグビーもすごかった。同じ日本人で、あれだけすごい活躍をされると燃え上がる」。触発の材料を得られる総合大会のメリットは逃さず生かし、準決勝まで勝ち上がった。

 マリーが勝利のガッツポーズを決めると、錦織は淡々とした表情でコートを去った。メダルを持ち帰るチャンスはまだ残っている。

 (鈴木智行)

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