紙面から

桐生、予選敗退も「自分の走りできた」

男子100メートル予選力走する桐生祥秀(左)。右端はウサイン・ボルト=隈崎稔樹撮影

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 リオの青い空とブルーのトラック。3レーン隣には憧れのボルトがいる。同組の9人のうち、自己ベスト9秒台が4人。これぞ最高峰の舞台だ。だが、桐生は緊張からか硬い走りでスピードに乗り切れず、10秒23で同組4着。初の五輪は予選敗退に終わったものの「自分の走りがうまくできた。悔いはない」。淡々とレースを振り返った。

 他人にはあまり関心がない。走るのは大好きでも、陸上や五輪に興味がなかった。12歳のとき、テレビで2008年北京五輪男子100メートル決勝を見た。ボルトが9秒69の世界記録(当時)をはじき出した瞬間、震えた。「単純にすげえな、速いなと思った」。自分の走りの動画をほとんど見ないが、「北京のボルトは何度も見ている。格好いい。やっぱり僕も一番になりたい」。少しずつ「五輪に出たい」と思うようになっていく。

 今季、スタート改善に取り組んだ。最初の3歩を逆「ハ」の字にして、スムーズに加速できるようにしてきた。しかし、あまり意識しすぎると小さな走りになってしまう。高校まではフォームのことなんて考えたことがなかった。走るのが好きだっただけ。五輪の舞台は楽しもうと原点回帰したが、世界の壁は厚かった。

 日本勢3人で、ただ一人予選敗退。五輪の難しさを痛感した20歳は「4年前は五輪に出ることなんて考えたことがなかった。この4年間で成長した。(次の4年で)その分だけ成長したい」と、東京五輪に目を向けた。

 (森合正範)

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