紙面から

岐阜の教え子に勇気 不屈の金藤選手

岐阜県選手権で地元高校生の活躍を喜ぶ金藤理絵選手(中)=2014年7月、岐阜市の長良川スイミングプラザで

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 「あきらめずに頑張ればすごいことが待っている」。十一日のリオデジャネイロ五輪競泳女子の200メートル平泳ぎで金メダルに輝いた金藤(かねとう)理絵選手(27)=Jaked、ぎふ瑞穂スポーツガーデン=の言葉だ。幾度もあきらめかけ、そのたびに立ち上がって、つかんだ頂点。支えてくれた家族へ、子供たちへ、ずっとそう伝えたかった。

 北京五輪で七位入賞も、期待されたロンドンでは代表にすら入れなかった。「もうやめよう」。そう思ったことは数え切れない。

 が、そんなとき「いい気分転換。リラックスできた」というのが岐阜県内のプールでの子供たちとの触れ合いだった。

 金藤選手が岐阜県体育協会入りしたのは大学卒業後の二〇一一年春のことだ。翌年にぎふ清流国体を控え「目玉選手」として誘われた。日本代表として厳しい練習や、国際試合に追われる中、ときどき岐阜に来ては中高生らと一緒に泳ぐようになった。ロンドン後もそれは変わらない。

 「どうやったら速くなるの?」。あるとき、そんな無邪気な問いにハッとした。答えは「私自身が気を付けなきゃいけないポイント」だったからだ。

 心の休日は泳ぐことに前向きな気持ちを取り戻させてくれた。

 リオ五輪が迫った今年五月に岐阜市内で開かれた子供たちとの交流会でも金藤選手はあの言葉を口にしている。「あきらめないで続けた先に、すごいことが待っている」。もちろん、言うはやすい。すごいことをしてみせてこそ、思いは質量を増す。

 開催中の全国高校総体(インターハイ)で、間もなく実施される競泳女子に出場する県岐阜商高(岐阜市)二年の小林ちひろさん(16)は、金藤選手に直接指導してもらったことがある。専門は同じ平泳ぎ。あこがれのりえ先生が金メダル。「わたしも、これから活躍できるように頑張りたい」と誓った。

 五輪決勝をスタンドで見守った金藤選手の父宏明さん(61)は娘にこう語りかけた。「あきらめずに頑張ってくれてありがとう」。同じことを思った子供たちもきっとたくさんいる。

(磯部旭弘)

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