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家族の支えで金字塔、姉のサプライズに奮起 200平の金藤選手

金メダルが決まり笑顔の金藤選手の父宏明さん(中)と母富士子さん(右)=11日、リオデジャネイロで(磯部旭弘撮影)

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 一度はあきらめかけた世界女王になる夢を、家族の優しさでつかみ取った。リオデジャネイロ五輪で競泳女子200メートル平泳ぎの金藤(かねとう)理絵選手(27)=Jaked、ぎふ瑞穂スポーツガーデン=が、この種目でバルセロナ五輪以来二十四年ぶりとなる金メダルに輝いた。卓球男子シングルスで、日本卓球史上初の個人でのメダルを手にした水谷隼(じゅん)選手(27)=静岡県磐田市出身=の強さの原点は、両親との厳しい特訓にあった。

 理想的なレース展開で金メダルを決めた直後は、まだ冷静だった。タイムを確認し、両隣の選手と健闘をたたえ合う。左手に作った小さなガッツポーズに、九年越しの悲願をかなえた喜びが凝縮されていた。

 十一日夜(日本時間十二日朝)、リオデジャネイロ五輪の競泳・女子200メートル平泳ぎで金メダルを獲得した金藤選手。競泳日本代表の主将を務めるベテランは夢の舞台まで家族の励ましを背に泳ぎ続けてきた。

 広島県庄原市の生まれ。三人きょうだいの末っ子で、小さいころから父の宏明さん(61)に泳ぎ方を教わってきた。小学校三年生のときに地元のスイミングクラブに入り「まともに泳げるのがこれだった」(金藤選手)と、平泳ぎを専門に取り組むようになった。

 六年生で一六五センチという長身と、だれにも負けない練習量でたちまち国内トップスイマーに。二〇〇八年の北京五輪に出場して七位入賞。だが期待された一二年のロンドン五輪は代表にすら入れず、「なぜ水泳を続けているのか」。そんな問いが頭を離れず「引退」も考えるようになった。

 一三年の世界選手権は四位。「まだ泳げる」と励ます宏明さんに金藤選手は反発した。「これだけやっても(メダルが取れず)しんどい。分からんのよ、お父さんには」

 すれ違う家族の思い。ひとつになったのは同年十一月にあった姉由紀さん(31)の結婚式がきっかけだった。

 由紀さんが企画して制作した金藤選手の応援映像をサプライズで流した。「人生の金メダル」として特注の金メダルもプレゼント。母富士子さん(58)が好きなヒマワリにちなんで「上を向いて」とのメッセージも入れた。宏明さんからメダルを首にかけられた金藤選手は号泣。再び泳ぎに前向きになれた。

 そして、リオへ。開幕前、金藤選手は「あきらめずに続ければ、その先にはすごいことが待っているんだと伝えられるレースがしたい」と語っていた。

 決勝のレースをスタンドで見守った宏明さんは「がんばれ!金藤理絵」の横断幕を手に「りえ〜」と声を張り上げた。金メダルが決まると、娘より大きなガッツポーズをして立ち上がり、喜びを爆発。報道陣に囲まれ「最高に感動した。あきらめずに頑張ってくれてありがとう」と話した。

 金藤選手は「いろんな八年間だったけど、仲間や戦ってきた選手、家族に応援してもらった。だからこそ私も、世界の頂点を狙ってやってこられたのだと思う」。表彰台に立ち、祝福する仲間たちの姿が目に入ると、感情が込み上げ、ようやく笑顔が輝いた。

 (磯部旭弘)

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