紙面から

明日に向かって美しく 体操個人の寺本、入賞に「満足」

体操女子個人総合決勝 最終種目の跳馬を終えガッツポーズする寺本明日香選手=11日、リオデジャネイロで(隈崎稔樹撮影)

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 「えっ、マジすか」。体操女子個人総合で八位入賞した寺本明日香選手(20)=中京大、愛知県小牧市出身=は、同種目の日本女子の入賞は五十二年ぶりと知らされると、大きな目を見開いてびっくり。「自分の演技をやりきれてこの結果なので、満足です」と喜んだ。

 日本の体操史に残る活躍を予感したのかは分からないが、寺本選手が成人式を間近に控えた今年の元旦、航空自衛官でパイロットの父寿さんが粋な計らいをしてくれた。母恵子さんと三人で軽飛行機に乗り、地元の愛知県営名古屋空港から「初日の出飛行」。暗いうちに離陸し、真っすぐ東へ、日本アルプスに昇る太陽に向かって飛んだ。

 口数の多くない父は、意図を詳しく語らなかったが、窓から見えた真っ赤な太陽は、輝く日の丸に見えた。寺本選手は「五輪頑張れ、っていうメッセージをがっつり受け取りました」という。

 明日香という名前は、寿さんが、自身が開発にかかわった輸送機「飛鳥」にちなみ、「明日に向かって美しく飛んでほしい」という願いも込められている。

 最後かもしれない娘の五輪を締めくくる演技は、さっそうと宙を舞う跳馬。ひねり技を決め、ぴたりと着地する姿をまぶたに焼き付けた父はスタンドで目を潤ませた。「入賞なんて信じられない。本当に無邪気な普通の子だと思っていたのに、こんなすごいことになるなんて」

 (中野祐紀)

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