紙面から

母のLINEで自信 星選手

競泳女子200メートルバタフライで銅メダルを獲得し笑顔の星奈津美選手=10日、今泉慶太撮影

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 うれしいから、ほっとしたから、こぼれた涙だった。女子競泳の200メートルバタフライで、ロンドン大会に続き銅メダルを獲得した星奈津美選手(25)=埼玉県越谷市出身。北京大会から三大会連続で出場している実力者はレース後、少し時間を置いて泣き始めた。ゆっくりと、かみしめるよう口にした。「今回が一番幸せなオリンピック」

 高校時代から、甲状腺の異常により、息切れしやすくなるといった症状が出る「バセドー病」と闘ってきた。ずっと薬で症状を抑えてきたが、二年前、完治を目指し、甲状腺を全摘出する手術に踏み切った。

 メスを入れたのは首元。バタフライは首の上げ下げが大きい。「手術後はしばらく、思い切り泳ぐことを怖がっていました」と母真奈美さん(53)は振り返る。

 準決勝まで思うような泳ぎができず、不安な気持ちで迎えた決勝の日。治安が心配で応援に来ないよう頼んだ真奈美さんから無料通信アプリLINE(ライン)でメッセージがあった。「奈津美のおかげでいろんな経験をさせてもらって、すごく幸せ者だと思ってるよ」

 迷いが吹っ切れ、スタート台へ。ゴールの瞬間、家族への感謝が真っ先に頭をよぎった。「私は本当に幸せ者だな」。自分や母、支えてくれた人たちのたくさんの幸せが詰まった幸せなレース。視線の先の掲示板には、ロンドン大会後で最もいいタイムが表示されていた。

 (福田真悟)

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