紙面から

主将寺本、大人になった 「できる技を美しく丁寧に」

体操女子団体総合決勝平均台の演技を終え、声援に応える寺本明日香選手=9日(今泉慶太撮影)

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 無邪気に何でもできたあのころとは違う。体操女子団体総合で四位に入った日本。弱冠二十歳にしてチーム最年長の寺本明日香選手は、最年少の高校二年で初出場した前回ロンドン五輪からの四年間、大人になるつらさと向き合ってきた。

 怖さを知らなかった、という精神的な話だけではない。「女子の衰えは早くて。私の実感では技の難度のピークは高校二、三年」。ロンドン直後の二〇一二年秋、跳馬の練習中のけがをきっかけに大技のユルチェンコ二回ひねりができなくなった。一四年には、世界選手権の平均台で二度落下して涙。昨年は手の指の靱帯(じんたい)を断裂するなど、けがも重なった。

 「リオではエースの働きをする、と誓ってスタートした四年間だったのに。落ち込んだし、ちっちゃいミスにもすぐ頭にきて、コーチに八つ当たりもした」という負の循環。ようやく断ち切れたのは、五輪代表選考会を兼ねた今年五月のNHK杯だった。「とにかく、観客を沸かせてやれ」とだけ考えて臨み、平均台の降り技でF難度の三回ひねりを決めた。三年ぶりの復活優勝を果たすと「ロンドンのころはいつも決めてましたから。自分らしくできた」と晴れやかな笑顔で語った。

 五輪イヤーの今年、成人式を迎えた。衰える恐怖は、あえて抑え込まないことにしたという。「できる技を、より美しく丁寧に、でいい。そう考えたら、演技中に観客の顔が見えるくらい落ち着いてできるようになりました」

 最終演技者として挑んだ最終種目の平均台は会心の出来だった。両手を上げたチームで最も小さな一四二センチのベテランのもとへ、チームメートが駆け寄り、皆で抱き合った。

 どんなチームでしたか−。「最高です。大好きです。ハハッ」。まだあどけなさの残る笑顔で答えた。 (中野祐紀)

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