紙面から

かあちゃん桜色メダル 7人制ラグビー・兼松選手

長女明日香さん(右)から「桜の金メダル」を首にかけてもらう兼松由香選手=8日、リオデジャネイロで(中野祐紀撮影)

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◆娘に感謝「普通の母に」

 桜のジャージー姿のまま、かあちゃんは娘を抱きしめた。八日(日本時間九日)、地元ブラジルとの順位決定戦に敗れ、十位が決まったラグビー女子7人制の日本代表「サクラセブンズ」。会場を去る最年長の兼松由香選手(34)=名古屋市=は、応援に訪れた「あーちゃん」こと長女の明日香さん(9つ)に「普通のかあちゃんになるよ」と語りかけた。(中野祐紀)

 ブラジル戦での出番はわずか1分半だったが、全力でフィールドを駆けた。「幸せですね」。試合後、十五年近い代表歴に幕を下ろすと明かし、「残りの夏休みは一緒にプールに行ったり宿題をやったりする。そんな夏は初めてだから、楽しみ」。

 愛知教育大生だった二〇〇二年、鋭いタックルと正確なキックを買われて15人制ワールドカップ(W杯)に出場。〇七年、前年に結婚した修さん(45)との間にあーちゃんが生まれたが、夫の理解と両親の助けを得て産後一カ月でフィールドに戻った。だが、〇九年の7人制ドバイW杯は右ひざのけがで欠場する。一二年の国際大会、香港セブンズも右ひざ手術で諦めた。「二度と大きな舞台に立てないかも」。心が折れかけた時、四歳だったあーちゃんが手紙をくれた。

 「かあちゃん、あしがなおたら(治ったら)またらぐびい(ラグビー)できる」。ぐにゃぐにゃの「へたっぴな字」に支えられ、また走り始めた。

 初の五輪は最後の大舞台になった。兼松選手にあーちゃんは手作りの賞状を読み上げて贈る。「オリンピックをとてもよくがんばりました。かあちゃんのタックルはいちばんよかったです」。それから「桜の金メダル」を首に。穏やかな笑みをたたえて、何も言わず、あーちゃんの頭をくしゃっとなでた。

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