紙面から

近藤選手、伝統ヨンパチで銅 視線は上

柔道女子48キロ級で銅メダルを獲得した近藤亜美選手=6日、リオデジャネイロで(佐藤哲紀撮影)

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 アルゼンチンを真ん中に韓国、日本、カザフスタン。柔道女子48キロ級の表彰式で並んだ国旗は、柔道の世界的な広がりを感じさせた。銅メダルの近藤亜美選手(21)=名古屋市出身=は、「48キロ級は日本がずっと先頭を走ってきたけど、見てもらって分かるように三番手」と率直な感想を語った。

 日本女子で「伝統の」と称される階級はヨンパチ(48キロ級)だけだ。五輪の正式種目となった一九九二年バルセロナから、谷亮子さんが二つの「金」を含む五大会連続のメダル。世界選手権でも谷さん、福見友子さん、浅見八瑠奈選手(コマツ)が金メダルを量産した。最軽量級は強い日本女子の象徴だった。

 輝かしい歴史に無頓着だった近藤選手。48キロ級で日本が初めてメダルを逃したロンドン五輪も、後で結果だけ知った。当時は愛知・大成高の二年生。看板階級の危機という実感も、四年後のリオデジャネイロで自分が雪辱するという野心もなかった。

 それが一転、二〇一四年の世界選手権を初制覇し、リオ五輪が現実の目標に。国内外のライバルたちから標的にされ、研究された。「国際大会で外国人選手は『日本に勝てば優勝』というイメージで来る。ヨンパチは特別」。だが、芽生えたばかりのプライドは重圧につぶされ、一五年の世界選手権で連覇を逃すと、人目をはばからず大泣きした。

 目指す頂の険しさは、先輩たちが築いた伝統があればこそ。友人でレスリング女子48キロ級代表、世界選手権三連覇中の登坂絵莉選手には「そういうものも全て背負って戦わなければ」と叱咤(しった)され、目を開かされた。同階級のライバルたちの思いも「光栄なこと」と全て背負ってリオへ乗り込んだ。

 銅メダルは近藤選手にとっても日本女子としても満足いく結果ではないが、メダルなしだった四年前のロンドンからは前進した。「しっかり練習して、一皮も二皮もむけて臨みたい」という四年後の東京五輪こそ、表彰台の真ん中でお家芸復活を示すつもりだ。(井上仁)

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