紙面から

内村が闘志秘め出陣 団体「金」へ余裕の演技

体操男子予選 内村航平のあん馬=内山田正夫撮影

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 開幕前の3日、緑と黄緑色に染まった会場の演技台で初めて練習したエースは「すごくいい」と表情を緩めた。「緑って落ち着かせる作用がある」。いかに平常心で戦うかをテーマに南米に乗り込んだ内村のために用意されたような舞台。ただ、色の力を借りなくても「いつも通り」を出し切る準備は整っていた。

 1種目目はあん馬。「落下の可能性が一番高いが、成功すれば気持ちも楽になる」という種目で、2番手の田中が落下した。予選は1人しか失敗が許されない。最後の4番手で登場した内村に重圧がかかるところだが、涼しい顔で演技を通しきった。

 4年前のロンドン五輪の前は自身を中心に、チーム全体が打倒中国への過剰な炎を燃やしていた。代表合宿の練習場ではその年の中国選手権の映像が流され、相手のDスコア(演技価値点)が上回っていると知るや、内村は大会1カ月前になっても技の難度の積み上げを試みた。本番の予選では、1種目目の鉄棒で、演技をした4人のうち3人が失敗し、波に乗り損ねた。

 今、見つめるのは自分たちの姿しかない。ライバル国の研究は水鳥寿思監督らスタッフ任せ。今回も若干、相手のDスコアが上回るが「こちらはどうなのか尋ねていないし、言われてもいない」と内村。昨年までに演技構成をほぼ固め、この1年近くで磨き上げてきた。「質を高める練習さえしていけば、負けない」。昨年の世界選手権で勝ったことで確信は深まった。

 「会場に入っても五輪という感じがしない。例年通りの国際大会と受け止めている」。普段と変わらない体操ニッポンを披露しさえすれば、リオの観客や世界のファンに「これぞ五輪」という非日常を提供できるはずだ。 (リオデジャネイロ・鈴木智行)

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