紙面から

母とつかんだ夢 15歳の卓球・伊藤

開会式で入場行進する日本選手団。中央は卓球女子の伊藤美誠。左から2人目は福原愛=リオデジャネイロで(AFP・時事)

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 母への感謝の気持ちを込めて行進した。卓球女子団体の伊藤美誠(みま、スターツ)は日の丸とブラジル国旗を持ち、観衆に手を振った。「入場で並ぶときに待ち時間があるので、多くの選手と交流するのが楽しみ」。開会式に参加した日本選手83人の中で最年少の15歳は他競技の選手と記念撮影をするなど、五輪の雰囲気を味わった。

 2006年2月24日。伊藤がまだ5歳のときだった。元卓球選手の母・美乃りさんは1枚の手紙を娘に渡した。練習の大切さを優しい言葉で説明し、最後はこう結んだ。

 「みま、これからもがんばって! オリンピックに にほんだいひょうで でようね!!」

 初めて「オリンピック」という夢を母娘で共有した。

 2歳から卓球を始め、4歳で静岡県磐田市に引っ越した。リビングにある卓球台で1日7時間の猛練習。

 母が「命懸けだった」と語るように、伊藤は深夜まで泣きながらラケットを振った。トイレに逃げ込んで寝たこともある。

 だが、オリンピックがあるから頑張れた。練習を終え、伊藤が布団に入り寝息をたてたころ、いつも母は耳元でささやいた。「美誠、頑張ってオリンピックに行こうね」。そして、必ず付け加えたひと言がある。「中国に勝って金メダルを取るのは美誠しかいないのよ」

 女子団体の初戦は12日。伊藤はこれまで試合で緊張したことがないという。「早く五輪を経験したい。どんな風に感じるんだろう。ワクワクする。絶対に楽しいと思う」

 母もコーチとしてリオデジャネイロで付き添っている。娘の耳元でささやいた五輪女王の座は、今や伊藤の目標にもなっている。 (リオデジャネイロ・森合正範)

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