紙面から

「熊本が応援、頑張れ」 植田選手の父が懸命のエール

 【ブラジル北部マナウス=植木創太】日の丸が翻るスタンドを最後はため息が覆った。四日夜(日本時間五日午前)、リオデジャネイロ五輪のサッカー男子一次リーグで、ナイジェリアに挑んだ日本。日本からのサポーターや、地元の日系人、日本びいきのブラジル人が「ニッポン」コールを合唱した。四月の熊本地震で被災したDF植田直通選手(21)の家族も「被災地を勇気づけて」と声をからしたが、届かなかった。

 アマゾン最大のサッカー場「アレーナ・アマゾニア」。地域には日本の進出企業や日系人も多く、スタンドの雰囲気はホームだ。激しい点の取り合いに青いユニホームを着たサポーターたちの歓声と悲鳴が交差した。

 植田選手の家族ら五人はスタンド中段に陣取り、「熊本に元気を」などと書かれた横断幕や日の丸を掲げた。植田選手は、被害の大きかった熊本市南隣の熊本県宇土市出身。父の太実男さん(53)は「地元のみんなが本当に苦しい中、応援してくれる。その思いを(植田選手に)確認させたかった」と話した。

 地震で家族にけがはなかったが、自宅は危険な状態となり一時、避難生活もした。土建業を営み、復興に飛び回る太実男さんはいまだ傷の癒えない街の現状をよく知っている。「熊本を勇気づけるためにも勝利を」という願いはかなわなかったが、まだ五輪は始まったばかり。「次こそは」と気を取り直していた。

 途中出場でゴールを決めたFWの浅野拓磨選手(21)のファンだという羽山温音君(12)は父親と観戦。負け試合とあって浅野選手のゴールパフォーマンスとしておなじみのジャガーポーズは出ず「こんどは勝ち越しを決めて見せてほしい」と期待した。

 浅野選手が所属していたJ1サンフレッチェ広島サポーターの金子一平さん(19)は「会場の雰囲気は最高だったけど、悔しい。次戦は浅野のハットトリックで快勝してもらいたい」と話した。

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