紙面から

リオ開幕 期待と不安 豊田のブラジル人

リオデジャネイロの海岸の写真を飾る店内で談笑する矢田ウィリアンさん(中)、カイオさん(左)ら=豊田市保見ケ丘で

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 リオデジャネイロ五輪が六日開幕するのを前に、豊田市に住むブラジルの人たちには、母国でのスポーツの祭典に期待する半面、不安もあるようだ。二千人以上のブラジル人が住む豊田市保見ケ丘の保見団地で聞いた。

 団地内唯一のブラジル料理店「ヴィタリー」では、壁面に五輪競技の映像を映し出す一五〇インチの大型スクリーンを用意。真っ白な砂浜がまぶしいリオの海岸の巨大な写真も張り出し、まさに“五輪モード”だ。

 開会式に向け、普段の二倍のビールを仕入れた店長の矢田ウィリアンさん(37)は「心配事もあるけど、大いに盛り上がってほしい」と笑顔を見せる。

 期待の的は「何と言ってもサッカー。次はバレー」。周囲では個人種目よりチーム競技にメダルの期待が高まっているという。店を手伝う矢田さんの長男カイオさん(16)は「ブラジル人は絆が強いからチーム競技が得意なんです」と話す。

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 暑さがやわらぐ夕方、団地中央のスーパー「フォックスマート」前には缶ジュースなどを手に会話する人の輪ができはじめる。

 「リオ? 二年前のサッカーワールドカップ(W杯)ほどじゃないね。みんなあまり五輪の話はしてないよ」と日系二世の小林スエコさん(56)は冷静だ。「スタジアム建設が遅れて、恥ずかしい思いもした」と話す。

 「楽しみな気持ちと不安は五十パーセントずつだね」と複雑な表情を見せたのは会社員の山崎サンドロさん(36)。「初の母国開催はうれしいけど、外国人客が街で強盗やひったくりの被害に遭わないか…」と治安状況を心配する。会社員デ・サンタナ・マルセロさん(25)も同意見で「お金があるなら五輪でなく、学校や病院作りに使ってほしい」と注文を付けた。

 (作山哲平)

◆リオの風景画展示 豊田でジゼレさん

ブラジル人学校に通うジゼレさんが描いたリオの風景画=豊田市保見町の保見交流館で

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 豊田市浄水町のブラジル人学校「イーエーエス豊田」に通うダ・シルバ・ジゼレ・ナカシマさん(15)が描いたリオデジャネイロの風景画が31日まで、リオ五輪に合わせ保見交流館(保見町)に飾られている。

 赤い空を背景に、観光名所コルコバードの丘に立つ巨大キリスト像や、大西洋に面したコパカバーナ海岸を、縦95センチ、横150センチのキャンバスに描いた。昨年9月、ブラジル文化を学ぶ自由学習の時間に制作した。

 ジゼレさんは、ブラジル人の父と日本人の母の間に日本で生まれ、リオに行ったことはない。「インターネットで写真を見てとても感激した。空の明るい色に高まった気分を絵で表現した」と話す。

 五輪には「リオで開かれてうれしい。ブラジルの選手にいっぱいメダルを取ってほしい」と期待を寄せる。 

 (岸友里)

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