紙面から

<踊る 中部のリオ代表>(5) 大石綾美(ボート女子)=愛知県豊田市出身、中部電力

◆マイペースで大舞台

「守りに入らず、どんどん攻めたい」と意気込む大石綾美(右)=埼玉県戸田市の戸田漕艇場で

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 恩師、そして憧れの人。大石綾美(25)は信頼を寄せる2人の言葉に支えられ、五輪の舞台へとたどり着いた。

 豊田市藤岡中バスケットボール部の先輩が、進学した愛知・猿投農林高でボート部に入り次々と活躍。「自分も全国大会に出たい」と続いた。同校を名門へと育て上げた監督の安藤治さんは「自分のペースでやればいい」。この助言が後にピンチを救う。

 頭角を現した高校2年の冬、シドニー五輪から4大会連続出場の岩本亜希子さんと一緒にこぐ機会を得た。「背中が大きかった。艇が進む感覚も全然違う」。エースの後ろ姿を間近に見て、リアルに五輪を意識し始める。

 早大時代にU−23(23歳以下)世界選手権女子シングルスカルで銅メダルを獲得するなど着実に実績を積み上げ、リオデジャネイロ五輪を視界にとらえる。だが、8カ月に及ぶ代表選考はかつて右膝半月板損傷、2度のあばら骨折を負った大石にとって過酷なものだった。

 焦りから練習過多に陥り、体が悲鳴を上げる悪循環。脳裏に浮かんだのは安藤さんの「自分のペースで」という声。そして、引退していた岩本さんは「綾美なら大丈夫」と、ことあるごとに「大丈夫」を繰り返してくれた。

 「すごく背中を押してもらった」。ずっと追い続けた岩本さんが4度立った、五輪への初切符をつかんだ。艇を降りればオールを縫い針や包丁に持ち替え、高校時代に学んだ被服や食品の知識を生かし、裁縫や料理を楽しむ。「守りに入らず、どんどん攻めたい」。冨田千愛(明大大学院)とともに、狙うは日本女子初の決勝進出だ。

 (高橋隆太郎)

◆ボート・カヌー・セーリング

 ボートは男子の中野紘志(新日鉄住金)が金沢市出身で金沢二水高、一橋大卒。

 カヌーは男子カナディアンシングルの羽根田卓也(ミキハウス、愛知県豊田市出身)が6月のワールドカップで日本勢初の3位。リオ五輪での期待が一気に高まった。長野県飯田市出身の同カヤックシングル矢沢一輝は善光寺大勧進の僧侶。女子カヤックシングルの妹、矢沢亜季(昭和飛行機工業)と兄妹そろって五輪で戦う。

 セーリング女子の宮川恵子(和歌山ク)は名古屋市出身、伊勢田愛(福井県体協)は滋賀県高島市出身。男子の土居一斗(アビーム)は長野県松本市出身。

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