紙面から

<躍る 中部のリオ代表> (4)衛藤昂(陸上男子走り高跳び)=鈴鹿市出身、AGF

「まずは予選突破」と初舞台での目標を掲げる衛藤昂=パロマ瑞穂スタジアムで

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◆努力の虫 描く放物線

 歩みは亀。だが確かな足取りで夢舞台にたどり着いた。

 衛藤昂(25)は幼少期、伊勢路で争われる全日本大学駅伝を沿道で応援し、競技に興味を持つ。同郷の野口みずきさんがアテネ五輪女子マラソンで金メダルを獲得したのは中学2年の夏。優勝インタビューの傍らでほほ笑むシューズメーカー社員の姿に、より興味がわいた。

 「将来は靴職人として競技にかかわりたい」と三重・鈴鹿高専の材料工学科に進学。本格的に走り高跳びに取り組みだした。当時から指導する同校の船越一彦さんは、衛藤の才能を「同じことを黙々と積み重ねることができる」。アキレス腱(けん)を鍛えるため地味で単調な鍛錬を毎日欠かさず、最大の武器である力強い踏み切りの基礎を築いた。

 高専はテストが厳しく、課題も盛りだくさん。しかし衛藤は追試や提出期限遅れなどで練習を休んだことがない。

 筑波大大学院から昨春、地元に戻って就職。再び鈴鹿を拠点にリオを目指した。転機は昨夏の世界選手権(北京)。初出場の舞台で衛藤は「他人の家にお邪魔しているようだった」と予選で敗れた。

 「海外勢より小さい選手が小さなジャンプをしても歯が立たない」。より大きな放物線を描くため、踏みきり位置を遠くする挑戦に今季は悪戦苦闘。ついに日本選手権で自己ベストを更新する、参加標準記録の2メートル29をクリアした。

 当初は選手を支える側にいるつもりだった五輪へ、主役として参加する。「まずは予選突破」。今まで通り、目の前の課題に全力で取り組む。 (高橋隆太郎)

◇陸上

 陸上男子の中部出身者は、短距離では桐生祥秀(東洋大、滋賀県彦根市)飯塚翔太(ミズノ、静岡県御前崎市)高瀬慧(富士通、静岡市)と実力者ぞろい。800メートルの川元奨(スズキ浜松AC、長野県佐久市)は追加選出でうれしい初出場。愛知県岡崎市からは棒高跳びの山本聖途(トヨタ自動車)と混成の中村明彦(スズキ浜松AC)、三重県鈴鹿市からは衛藤とマラソンの石川末広(ホンダ)が出場する。1600メートルリレーは4人中3人が中部出身。愛知県豊明市出身の田村朋也(住友電工)静岡県磐田市出身の加藤修也(早大)福井県敦賀市出身の北川貴理(順大)はいずれも初出場となる。

 女子は長距離の鈴木亜由子(日本郵政グループ、愛知県豊橋市)と尾西美咲(積水化学、三重県伊勢市)。3000メートル障害の高見沢安珠(松山大)は三重県最南端の紀宝町で生まれ育った。

 浜松市のスズキ浜松ACからは川元、中村のほか男子やり投げの新井涼平と女子やり投げの海老原有希、開会式の旗手を務める男子混成の右代啓祐も出場する。

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