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富山

【データで読む 北陸図会】(3) 県内若手医師 4割流出

2019年7月17日

産科医不足 県内で偏り顕著

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 石川県内の医学部で学び、医師免許を取得した若手医師のうち、約7割が県外へと流出し、その割合が全国1位であることが分かった。富山県の流出率は約4割で13位。ここ20年間の勤務地選択の実態を調べた医療ガバナンス研究所への取材で明らかになった。

 割合は1994〜2014年の平均値。流入が多いのは千葉、埼玉、兵庫などの都市周辺だった。研究所が18年6月に発表した。

 一方、厚生労働省が17年に公表した医師の勤務実態調査では、全国の医師の4割強が地方で勤務する意思がある。意思がない理由には労働環境への不安や希望する仕事ができないことを挙げた。

 ちっちゃい手足を震わせて、真っ赤な顔で泣く。いとおしそうに見つめる家族。ただ、ガラス越しの新生児室は空きが目立つ。

 女性1人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」の低迷が続く。全国平均の過去最低は2005年の1.26。その後は緩やかな右肩上がりを示すが、記録が残る1960年の2.0とは差がある。

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 政府は子どもを望む全ての人が希望する人数を授かる「希望出生率」の目標を1.8とし、若者の雇用安定、結婚から妊娠・出産、子育てまで切れ目のない支援に取り組む。参院選では野党各党が税負担の軽減や子育て環境の整備など次世代への投資を公約に掲げる。あの手この手を尽くすが、抜本的な改善には遠い。

 こうした中、地方では分娩(ぶんべん)を休止する病院が増加。産科医不足が原因の一つだ。厚生労働省によると、17年の分娩医療施設は記録が残る08年に比べ、石川県で4減の31カ所、富山県は5減の21カ所に。富山県朝日町のあさひ総合病院では「常勤医が確保できず、非常勤だけでは急なお産に対応できない」と、03年に分娩をやめた。

 高齢化が加速する地域の産科医不足は深刻だ。石川、富山両県内でも地域間の偏りは顕著で、医療圏別にみると、分娩を担当する産科医数の格差は富山では南西部と中央部で最大5.6倍。石川では奥能登と金沢市近郊で最大28.5倍にも上る。施設数も富山の5倍に対し、石川は9.5倍の格差がある。

 NPO法人「医療ガバナンス研究所」(東京)研究員の谷本哲也医師は「医師が少なく、地方勤務には過剰な負担を懸念する傾向がある。専門的な経験が十分に積めない懸念もあって医師の偏在が起きている」と指摘。「多様な働き方を認めることも、地方の医師不足を解消することにつながる」と話した。(参院選取材班)

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