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富山

【データで読む 北陸図会】(1)新幹線開業後も外食チェーン続々

2019年7月14日

売り上げ 都会に吸われ

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 本紙は7月上旬、インターネットや雑誌などの情報を基に石川、富山両県にある居酒屋や和食、洋食、カフェなどの外食チェーンを独自に調査。地元資本ではない店を対象に進出の有無、出店の時期を運営会社に取材し、集計した。確認した295店のうち、石川は153、富山は142。

 北陸新幹線開業から四年余り。金沢、富山の駅前ビルには外食チェーンの看板が連なり、観光客や出張の会社員らが街を行き交う。

 石川、富山両県で外食チェーンの出店が始まったのは四十年前にさかのぼり、その数は、少なくとも計二百九十五店に上ることが、本紙の取材で分かった。

 急伸したのは大型郊外店のテナントとして進出した二〇〇〇年前後。新幹線開業を控えた〇六年以降は、市街地にもハイペースで出店が続いた。一五年の開業後も勢いは衰えず、今年七月までの四年余りで六十五店と、全体の22%を占める。特に駅周辺は大手の居酒屋チェーンの競争が激化している現状が浮かぶ。

「予想以上の観光客」

 北陸経済研究所(富山市)の藤沢和弘さんによると、全国的には外食産業市場は一九九七年をピークに縮小。北陸の出店ピークが全国とずれている点には「激戦区の東京や大阪が飽和状態になった後、地方に遅れて進出した」と説明する。

 新幹線開業後の出店競争に「観光客の多さは予想以上だったのだろう。訪日外国人の取り込みも狙っている」と分析。多くの外食チェーンの売り上げは東京などの本社に流れ、地域経済への波及効果は限定的として「チェーン店の安さと宣伝力に負け、廃業する地元店も出ている」と話す。

 地域経済の活性化を巡って安倍晋三首相は六月二十六日の国会閉会後の会見で「中小・小規模事業者を全力で応援する」と強調。野党も支援を約束する。社民党は参院選の政策集で、中央集権型の社会構造について「地元でおカネが回る仕組みの形成を阻害する」と明記し、警鐘を鳴らす。

 帝国データバンクによると、一八年度に倒産や休廃業に追い込まれた飲食店は石川で二十四件、富山では十八件とそれぞれ直近五年間で最多。金沢支店の担当者は「大手チェーンの進出で飲食店が過剰供給の状態だ。資本力の弱い地場の店があおりを受けている」と懸念する。

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 政府が二〇年度以降の新たな「地方創生」の方向性を示した中で行われている参院選。北陸地方の経済や医療、子育てなどは今、どんな立ち位置にあるのか。昭和初期に創刊され、高校の授業や大学入試などに利用される民間の統計年鑑「日本国勢図会(ずえ)」の手法にならい、この地域の実情を随時、データを読み解きながら分析していく。(参院選取材班)

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