• 中日新聞ウェブ
  • 中日新聞プラス

富山

【データで読む 北陸図会】(2) 売れる高級車 減らぬ貧困

2019年7月15日

輸入車10年で2.5倍 2割年収200万円以下

写真

 流線形の真っ赤なボディー。跳ね馬のエンブレムが光る。イタリア製高級スポーツカー、フェラーリの北陸唯一の正規取扱店「グランテスタ」(金沢市)。売れ筋は四千万円台。「ブランドを愛し、こだわりある方が買う」と担当者は語る。複数を所有する顧客もいるという。

 輸入車の新規登録台数が伸びている。日本自動車輸入組合によると、この十年で石川は二・五倍、富山は二・六倍に。全国の伸び(二・〇五倍)を上回る。高級メーカーに低価格帯の車種が登場して買いやすくなり、全体の数字を押し上げているが、二千万円クラスの超がつく高級車も売れている。例えば二千五百万円以上するフェラーリが今、北陸三県で約三百台も走っている。金沢市や富山市で、それぞれ四十〜五十台ある計算だ。

 一方で家計の豊かさを示す可処分所得はどうか。二人以上の勤労者世帯でみると石川、富山両県は二〇一七年、ともに月額約五十一万円で全国上位。自民党は参院選でアベノミクスの実績として「可処分所得が四年連続で増えた」と訴える。

 ただ、大和総研(東京)研究員の是枝俊悟さんは、可処分所得は、共働き世帯が増えた影響で平均額が上がったにすぎないとして「新たな収入源を得たのは、ごく一部だ」と指摘する。

 豊かさが行き渡らない現状は貧困世帯の割合にも現れる。北陸では年収二百万円以下の人の割合はこの十年、二割前後で推移し、一向に減らない。参院選では立憲民主や共産、維新の各党が非正規社員の正社員化によるワーキングプアの解消や格差是正を訴える。

 格差社会に詳しい早稲田大の橋本健二教授は「貧困から抜け出せない人がいる一方、資本がある豊かな人がさらに資本を増やし、豊かになっている」と分析。一九八〇年代から進む格差の拡大に「有効な策を打てずにきた政治のあり方が問われている」と話す。(参院選取材班)

写真

 【可処分所得】働いて得た給料やボーナスなどの個人所得から支払い義務のある税金や社会保険料などを差し引いた後に残る手取り収入。個人が自由に使える額を意味し、購買力を測る指標にも使われる。

主な政党の公約

新聞購読のご案内