「老後の安心」訴え 富山選挙区 2候補第一声
2019年7月5日
四日に公示され、与野党一騎打ちとなった参院選の富山選挙区。直前には「老後資金二千万円問題」が浮上。政権が進める地方創生の行方、安倍晋三首相が意欲をみせる改憲にも注目が集まる。こうした争点を国民民主新人の西尾政英さん(58)と自民現職の堂故茂さん(66)は、有権者にどう語ったのか。第一声を追った。(酒井翔平、向川原悠吾)
出陣式で拳を突き上げて気勢を上げる支援者たち=4日、富山市内で |
■年 金
老後に二千万円の蓄えが必要とした金融庁の審議会報告書に端を発した「老後資金二千万円問題」で、年金制度への不安が広がる。
「老後の不安ゼロを目指す」と語る西尾さんは、現行制度を「掛け声だけの百年安心だ」と批判。「老後のセーフティーネットとして、月七万〜八万円の基礎年金を最低保障年金として確立していく」と声を張り上げた。
堂故さんは二千万円問題に触れなかったが「年金をしっかり維持確保する」と強調。「医療や介護、子育て世代にも配慮した全世代型の社会保障制度を構築し、活力維持型の健康長寿社会にモデルチェンジしなければならない」と訴えた。
■地方創生
西尾さんは富山市や高岡市の例を挙げ、市街地への一極集中が続いていると指摘。各自治体に交付金を分配し、地域の実情に合った活用が必要と訴えた。
堂故さんは「地方創生の追い風をいかし、富山から地方創生のエネルギーを巻き起こしていく」と語り、薬やアルミなどの産業を振興させる考えを示した。
■改憲触れず
西尾さん、堂故さんともに改憲には触れなかった。国民民主は公約で自衛隊を九条に明記する改憲に反対しているが、議論自体は否定していない。自民は「現行憲法の自主的改正」を結党以来の党是としている。
県内で聞く名付けて○○選挙
今回の参院選について、富山県内のジャーナリスト、在住外国人、伝統工芸の職人らに受け止め方や願いを聞き、尋ねた。この選挙、名付けるなら−?
「意見持とう」「迷Q」
「イタイイタイ病を語り継ぐ会」の代表運営委員でジャーナリストの向井嘉之さん(75)=富山市=は「自分の意見を持とう選挙」と命名した。「民主主義には権力の監視が不可欠。それなのに、有権者からはさまざまな問題に怒るエネルギーを感じない。一人一人が主張を持たないと、政治は変わらない」と指摘した。
「『迷Q選挙』かしら」と話したのは、ドキュメンタリストで「細川嘉六ふるさと研究会」代表の金沢敏子さん(68)=入善町。「幸せはどこに?という感じで、出口が見えない。閉塞(へいそく)感も強く感じる。争点(クエスチョン)も見えにくいから」と理由を説明した。
「人口減ファイト」
高岡市国際交流員で中国系カナダ人通訳のウェイジア・ジュウさん(25)=高岡市=は「今の日本は少子化と人口減の話が多いので『人口減ファイト選挙』」と提案。「人口減の日本の未来をしっかりと考えていける人を応援したら良いと思う」とアドバイスした。
「五輪前の平穏選挙」になると予測したのは井波彫刻師、南部克紀さん(59)=南砺市。「東京五輪を控え、静かな選挙になるのでは。それだけ政権が安定しているとも、野党がふがいないとも言える。伝統工芸は厳しさが続き、心にゆとりがないと買ってもらえない。年金問題など将来の不安を取り除いてほしい」