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総合

10月の消費増税確実 年金など説明責任重く

2019年7月22日

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 自民、公明の与党が二十一日投開票の参院選で、非改選議席と合わせ過半数を維持したことで、十月の消費税率10%への引き上げが確実となった。安倍晋三首相はこれまでの政策を継続する。一方、有権者の関心を集めた年金問題では、選挙戦で年金給付の将来像が示されず、老後不安は消えていない。原発維持のエネルギー政策や、譲歩を「密約」したと野党が指摘する日米貿易交渉も含め、国民への説明責任はなお重い。

 首相は同日夜、テレビ朝日の番組で消費税増税について「伸びていく社会保障に対応し、全世代型の社会保障制度を構築する上でも、国の信認を守るためにも必要だ」と予定通り行う方針を強調した。

 政府は税率引き上げに合わせ、軽減税率制度や幼児教育・保育の無償化を導入。ポイント還元や低所得者、子育て世帯へのプレミアム付き商品券発行、住宅・自動車購入への税制上の優遇策で消費喚起を狙う。

 だが、消費税増税が経済に与える影響は大きい。支援策が手薄とされる中間所得層の個人消費が伸び悩めば、景気減速を招く。米中貿易摩擦の長期化で、中国への輸出減少による下振れリスクも残る。景気回復を実感できない状況が続けば、政権は求心力を失う。政府は景気動向をにらみつつ、二〇二〇年度当初予算でも「適切な規模の臨時・特別の措置」を取る構えだ。

 老後に二千万円の蓄えが必要と試算した金融庁審議会の報告書をきっかけに、公的年金制度のあり方が参院選の主要争点となった。少子高齢化で年金給付水準の低下が見込まれる中、年金財政の健全性を調べる五年に一度の財政検証の公表を政府が選挙後に先送りし、将来の給付の姿は見えない。年金制度を巡る議論を深め、国民の老後不安に応える姿勢が求められる。

 首相が進める日米同盟強化路線を巡っても、懸案が山積みだ。トランプ米大統領は参院選公示直前に、日米安全保障条約が不公平だと明言。米国は中東のホルムズ海峡などで民間船舶を守る米国主導の有志連合構想への参加を呼び掛けており、近く自衛隊派遣の有無について判断を迫られる。

 元徴用工問題を巡る韓国との対立が激化。首相が解決に意欲を示す北方領土や拉致問題も難航し、外交面の行き詰まりが目立つ。

 政府の原発再稼働路線に関し、住民は事故への不安を募らせる。原発ありきのエネルギー政策の是非は引き続き焦点になる。

 (後藤孝好)

主な政党の公約

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