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総合

<公約点検>経済政策 与野党競う家計支援

2019年7月13日

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 自民、公明の与党が経済成長の実現を訴え、野党側は「家計重視」を看板に対抗する−。第二次安倍政権発足後の国政選挙の対決構図だ。今回は、与党が消費税増税をにらんで家計に配慮する姿勢を強めた結果、与野党が家計支援を競う色彩も濃くなった。

 自民は安倍晋三首相の決めぜりふを引いて「政策を総動員し、成長と分配の好循環をつくる」と公約。首相の経済政策アベノミクスは、大企業が経済を引っ張り、その恩恵が家計にも及ぶという青写真を描いている。最大の目標は国内総生産(GDP)六百兆円だ。

 首相は政権復帰後の二〇一三年に日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁を起用し、金融市場に大量のおカネを流し込む「異次元の金融緩和」を始めた。事実上の円安誘導で、輸出関連の大企業の利益を押し上げた。与党は、企業増益や雇用増、所得増をアベノミクスの「実績」として公約に列挙した。

 対する野党四党は、大企業の増益が従業員の賃上げや消費の拡大につながっていないと反論する。子育てや教育に直接投資して家計を潤わせると訴え、「実感なき景気回復」に実感を伴わせていく戦略を立てる。

 立憲民主の枝野幸男代表は「安倍政権で企業は大きなもうけを出したが、暮らしは良くなったか」と遊説で強調。国民民主には成長重視の議員が立民より多いとみられるが、やはり「家計第一」を前面に押し出す。共産、社民もアベノミクスを「大企業重視」と批判する。

 ただ、与党も企業主導の成長一辺倒ではない。経営者の反発が強い最低賃金の引き上げを目玉政策の一つに掲げる。特に公明は直接家計に働き掛ける政策を重視する傾向が元々強い。与党がそろって公約したプレミアム付き商品券配布は公明が主導した。こうした公約の結果、与党も軸足を以前より家計重視に寄せた。

 最低賃金の引き上げを公約に盛り込まず、成長重視が鮮明な主要政党は日本維新の会だけだ。

 アベノミクスの代名詞、金融緩和の是非は各党公約や論戦でほとんど取り上げられていない。超低金利の長期化で地方銀行の経営悪化といった副作用が表面化しているのに、参院選は経済政策の大きな方向性の論争ではなく、「どちらが家計に寄り添っているかの争い」(エコノミスト)の様相を呈している。

 政治団体「れいわ新選組」も、一人当たり月三万円を配る「デフレ脱却給付金」など家計重視の公約を示している。

 (渥美龍太)

主な政党の公約

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