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総合

<公約点検>憲法 改憲勢力、微妙な距離感

2019年7月9日

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 安倍晋三首相は「憲法を議論する政党か、しない政党かを選ぶ選挙だ」と改憲を主要争点に据える考えを表明している。自民、公明の与党と日本維新の会の「改憲勢力」に対抗し、立憲民主、国民民主、共産、社民の各党が安倍政権下の改憲阻止を訴える−。これが基本的な対決構図だ。

 公約をチェックすると、改憲勢力、対抗する野党四党のいずれも、内部に距離感のあることが分かる。自民が自衛隊を九条に書き込む改憲案を掲げたのに対し、公明は「慎重に議論されるべきだ」とあえて明記した。維新も改憲項目に九条を挙げなかった。

 改憲勢力内では自公の隔たりが大きい。公明は憲法論議に前向きだが、九条に関しては集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法の制定を踏まえ「いま触る必要はない」(山口那津男代表)と主張。維新は九条改憲も「真正面から議論する」(松井一郎代表)と明言している。自らの改憲案に自民から賛同を得られれば、九条改憲も支持する可能性が高い。

 野党四党は安倍政権下の改憲に反対という点では一致するが、「改憲阻止」のニュアンスに違いがある。立民、国民は状況と内容によっては将来の改憲を認める姿勢。共産、社民は「護憲」の立場だ。

 旧民主・民進党の出身者が多い立民、国民の憲法を巡る公約はほぼ同じだ。いずれも憲法論議の対象に首相の解散権制約と知る権利を挙げ、九条を議論する前提として安保法廃止を唱える。それでも、両党の憲法を巡るスタンスには開きがある。

 各党の候補者に対する共同通信のアンケートで、立民は全員が九条への自衛隊明記に反対したのに対し、国民は87%にとどまった。だからこそ、首相は改憲発議に必要な三分の二以上の議席確保に向け、与党と維新に加え「国民にも憲法改正に前向きな方々がいる」と名指しした。

 参院選の結果、改憲勢力が非改選も含めて三分の二をわずかに下回った場合、安倍政権にとって改憲に理解を示す野党議員の存在が重要になる。個別に働き掛け、数人を「一本釣り」すれば、選挙を経ずに三分の二を回復できるからだ。自民には、今回の参院選で旧民主の現元国会議員四人を公認した「実績」もある。

 政治団体「れいわ新選組」は公約で憲法に言及していない。

(村上一樹)

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 各党の参院選公約を重要政策ごとに点検し、与野党の立ち位置の違いを読み解く。

主な政党の公約

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