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改憲勢力86議席なら首相強行か

2019年7月5日

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 参院選の結果は、改憲の行方を大きく左右する。与党と日本維新の会などの改憲勢力が、改憲発議の要件である三分の二以上の議席を維持すれば、自民党は民意を得たとして、反対を押し切ってでも改憲の手順を進める可能性が高い。逆に三分の二を大きく割れば、強引に進めることが難しくなり、安倍晋三首相が目指す二〇二〇年の新憲法施行は遠のく。

 改憲勢力は参院選で八十六議席を獲得すれば、非改選と合わせて参院で三分の二以上を維持する。

 参院選について首相は「憲法の議論すらしない政党を選ぶか、議論を進めていく政党を選ぶか決めてもらう選挙」と繰り返している。選挙後、「議論を進める政党が支持された」として改憲を加速するための布石だ。衆参両院の憲法審査会で議論がほとんど行われず、自民党が改憲条文案を三国会連続で提示できていない現状が念頭にある。

 具体的には、参院選で三分の二以上を維持すれば、秋の臨時国会で野党が反対しても憲法審を開き、自由討議を設けて改憲条文案を説明。改憲勢力だけで「改憲原案」の作成・国会提出も想定しているとみられる。首相に近い自民党幹部は「秋の国会は、改憲に前向きな野党も巻き込んで議論を進めたい」と打ち明ける。

 その上で、来年の通常国会で改憲原案を可決し「改憲案」として発議。最長百八十日の国民投票運動を経て国民投票を実施する考えとみられる。逆に言えば、これだけ急がないと来年中の新憲法施行は不可能だ。

 改憲勢力が三分の二を下回れば、首相は、一部の国民民主党議員を取り込み三分の二の再構築を目指す。国民は「憲法をしっかり議論していく立場」(玉木雄一郎代表)で、協力を得やすいと考えているようだ。

 三分の二を大きく下回れば、首相主導の改憲には歯止めがかかる。数の上で改憲発議ができなくなる上、民意を背景に立憲民主党などが勢いを得て、憲法審での拙速な議論に徹底的に反対するのが確実だからだ。

 改憲勢力も、もともと一枚岩ではない。維新は、自民党が最重視する自衛隊明記を公約に書いていない。

 それ以上に、与野党合意を重視する公明党は自民党との隔たりが大きい。先に行われた各党政策責任者らによる討論会で、首相の任期中に改憲を進めるべきか「○」か「×」で問われ、公明党は回答を避けた。一六年参院選では、改憲について「○」としていた。

 共同通信社の立候補予定者アンケートでも、公明党で自衛隊明記に賛成したのは7・7%だけ。改憲勢力が三分の二を大きく下回れば、公明党は、期限を区切る自民党の改憲に、一層冷淡になる可能性が高い。

(清水俊介)

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