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18→19歳、続かぬ選挙熱 学生多忙、住民票そのまま

2019年7月3日

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大学のキャンパス近くに設置された参院選候補者のポスター掲示板=2日、名古屋市瑞穂区で

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 三年前の二〇一六年七月の参院選から、選挙権が十八歳以上に引き下げられた。当時の十八歳の投票率は51・28%だったが、翌年十月の衆院選の十九歳の投票率は33・25%に低下した。高校三年生の時に投票に足を運んでも、卒業すると選挙への関心が薄れるようだ。大学進学後に実家を離れても住民票を移さない人は少なくなく、故郷に戻って投票するのは面倒との声が聞かれる。高校などが、選挙や政治について教える「主権者教育」が不十分との指摘もある。

 三年前の参院選。高校三年だった愛知県小牧市出身の男性(21)は高揚した気持ちで、生まれて初めて一票を投じた。授業でも、選挙や政治を学んだという。だが、滋賀県内の大学に進んだ後の一七年の衆院選は棄権した。

 住民票は小牧市に残したままで、投票には帰省する必要がある。市役所などで期日前投票も可能だったが「選挙期間中は、授業もぎっしり詰まっていて、帰る気になれなかった。正直なところ、政治への関心も減っていた」と明かす。

 帰省しないで済む不在者投票制度もあるが、住民票のある自治体に投票用紙を請求するといった手続きが必要で「煩雑」との指摘も。名古屋市天白区の愛知東邦大三年、村瀬満菜美さん(21)は「大学生もバイトやサークル、就職活動と忙しい。友だちとの間で、選挙が話題になることはないです」と話す。

 「現状では主権者教育は不十分。生徒の政治への関心を長続きさせられない」。そう語るのは、愛知県内の私立高校の男性教諭だ。

 教諭は「選挙の仕組みや意義は教えているが、各政党の考え方の違いなど、『ナマの政治』はほとんど教えていない。これではなかなか関心が深まらない」と指摘。「教育現場には、政治の現実を教えることにちゅうちょする雰囲気があるし、そもそも、それを教えられるだけの知識がある教諭も少ない」と明かす。

 若者の政治への関心を長続きさせるには、何が必要なのか。

 名古屋市千種区の名城大四年、野村真由さん(21)は「インターネット投票」を求める。「もっと簡単にできるようにしないと、若者の投票率はずっと上がらない」と訴える。

 名古屋市立大人文社会学部の三浦哲司准教授(地方自治論)は「主権者教育を高校になってから始めるのでは遅い」と指摘する。

 「小学生に選挙を学ばせるのは難しいが、身近なまちの課題の解決方法を考えさせる授業はできる。幼いころから、社会に関心を向けさせる積み上げが大事だ」と話している。

 (安田功)

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