• 中日新聞ウェブ
  • 中日新聞プラス

総合

自民、公約に「早期改憲」 消費増税は予定通り

2019年6月8日

 自民党は七日、夏の参院選に向けた選挙公約を発表した。二〇一七年の衆院選公約に引き続き「憲法改正」を重点項目の一つに掲げ、自衛隊の明記など改憲四項目を明示。その上で改憲施行を目指す時期は「早期」とした。消費税増税は予定通り「十月に税率を10%に引き上げる」と記した。

 「憲法改正」では、党憲法改正推進本部が「条文イメージ」として昨年まとめた(1)自衛隊の明記(2)緊急事態対応(3)合区解消・地方公共団体(4)教育充実−の四項目を列挙した。改憲施行を目指す時期は、一七年公約では明示されず、今回初めて追加された。

 岸田文雄政調会長は会見で、改憲施行を目指す時期を「早期」にしたことについて「基本的な方針をあらためて記載した」と話した。

 消費税増税は、六つの重点項目には盛り込まれなかったが、各種政策分野の公約を網羅する「政策バンク」の中で十月実施を明記。岸田氏は「引き上げを予定通り行うことは大変重要だ」と強調した。重点項目の一つとした「人生100年」の具体政策には、増税分を財源として十月から始める幼児教育・保育の無償化を盛り込んだ。「人生100年」には、女性活躍推進を初めて重点項目として盛り込み「男性の意識改革と職場風土の改革を促し、家事・育児を適切に分担する社会を推進する」とした。

 公約の重点項目はほかに、外交・防衛▽経済▽地方創生▽復興と防災−の四項目。トップに掲げた外交・防衛では、北朝鮮について、米国などと連携し「核・ミサイルの完全な放棄を迫り、拉致被害者全員の帰国を目指す」と記述。政策バンクでは、首相が日朝首脳会談の開催実現を目指し言及を避けていた「圧力を最大限に高め」との文言も盛り込まれた。

 原発・エネルギー政策については、政策バンクで「原発依存度の可能な限りの低減などの方針を堅持」した上で「再稼働を進める」と書き込んだ。

<解説>選挙後 議論加速狙い

 夏の参院選に向け自民党が発表した選挙公約は、自衛隊明記などの改憲四項目をあらためて明示した上で、新たに「早期」の実現を強調した。選挙後に改憲に向けた論議や手続きを一気に加速させたい安倍晋三首相(党総裁)の意向が色濃く反映されている。

 改憲四項目は二〇一七年衆院選の公約でも列挙されており、選挙公約への明記は二度目だ。今回は、一八年に党憲法改正推進本部が四項目を「条文イメージ」としてまとめ、党大会でも示したことを受けて、国会での議論に付すための党の公式な条文案として位置付けられている点が、二年前とは大きく違う。

 首相は二〇年の新憲法施行を目標に置くが、今回の公約での明記は見送った。野党の警戒心から改憲論議が進まない国会の状況を踏まえたとみられる。

 だが、下村博文党憲法改正推進本部長は「(二〇年を)入れたいのはやまやまだ」と語っている。今回の「早期」の文言に、二〇年改憲施行の目標が含まれていると見た方がいい。

 首相側近は「秋の臨時国会では改憲に前向きな野党を巻き込んで議論を進めたい」と打ち明ける。自民党が参院選に勝利すれば、国民の理解を得たとして、国会で早速強気の姿勢に転じる可能性は高い。

(政治部・清水俊介)

主な政党の公約

新聞購読のご案内