白鳥浩・法政大院教授（現代政治分析）　明確な争点や対立軸が不在の中、静岡選挙区は組織力が当落に直結した。公示直前まで取り沙汰された衆院選との同日選の可能性に視点を奪われ、各党の公約や政策の違いを、われわれ学者やマスコミを含め、詰め切れなかった。

　国土交通副大臣の立場で防災や危機管理を強く訴えた自民の牧野さんは、野党候補に政策論争の余地を許さず、政権与党の強みを生かし切った。自民・公明で１人しか立てず、負けるはずのない戦いだった。

　全国的には立民が野党の主導権争いを制した形だが、国民の榛葉さんは連合静岡を中心に組織力を生かし、負けられぬ戦いに勝った。「政権批判オンリー」にならず他野党候補との差異化にも成功した。

　４選を果たした榛葉さんの存在感は党内で増す一方、党の存在理由はますます希薄化する。改憲勢力にかじを切るかもしれない。消費増税による景気の腰折れ感が出る前、今年末にも解散、改憲を争点にした総選挙の可能性もある。

　立民の徳川さんは脱原発や改憲阻止など党公約よりも「左」に流れる独自のスタンスを貫き、一定のインパクトを残した。